老いるという事実と向き合うこと [ラッキー]

 2017年 アメリカ

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あらすじ

 ラッキーは年老いてなお矍鑠(かくしゃく)とし、荒野に独りで暮らしていた。

 毎朝起きると、運動して、牛乳を飲み、歩いて食堂まで行ってコーヒーを飲みながら店主達とおしゃべり。帰り道に雑貨店で牛乳を調達して、お気に入りのテレビ番組を観る、そんな規則正しい生活を送っていた。

 ある日ラッキーは突然自宅で倒れた。病院で診察してもらうが、医師の診断は、どこも異常はない、奇跡のような健康体というものだった。ラッキーは納得できなかったが、医師の「誰でも歳とともに衰えるものだ」という言葉で、(傍目には十分年寄りなのだが)初めて自分が老いていることを自覚し、永遠に続くと思っていた今の生活をいずれ終える日がやってくることを悟った。

 行きつけのバーに行くと古くからの友人が弁護士と話し込んでいた。聞けば終活の相談をしているのだという。ラッキーは「人間誰もが死ぬのだから家族のために備えるのは当然のことだ」と言う弁護士を詐欺師だと批判した。

 翌日、いつものようにサボテンに水をやっていると、近所の女性が様子を見に訪ねてきた。構われるのが鬱陶しかったが、彼女達が帰る時に、彼は「怖いんだ」と心中を吐露した。

 その次の日、ラッキーは招待されていた近所の商店主の孫の誕生パーティーに出席し、そこで昔軍隊にいる頃に覚えたスペイン語の愛の歌を熱唱し喝采を浴びた。

 上機嫌でバーに行ったラッキーは、ルールを破ってタバコを吸い始めた。そのことをマスターに咎められると、所有などまやかしだ、真実は全てがなくなるということ「無」だと反論した。

 翌日、ラッキーはいつものように街を歩いた後、荒野で見かけた1本の巨大なサボテンをまじまじと眺めた。そしてタバコに火を付けるとほほえみ立ち去った。

感想

 パリ、テキサスの主演、その他エイリアン等100本以上の映画に出演したハリー・ディーン・スタントンの最後の作品です。

 ラッキーは生涯独身で家族もいませんが、寂しくないのかと尋ねられると「”孤独”と”独り”は同じじゃない」ときっぱりと反論します。ラッキーの日常は本人にとってとても居心地が良いものだったので、それは強がりではなく本心だったと思います。

 そんなラッキーの自立心を尊重しながら、さり気なく支えてくれる町の人々に囲まれるラッキーの人生を羨ましく感じました。

 人はいずれ必ず死ぬ。言うまでもない真理ですが、それを受け入れるのはとても難しい、そんなことを考えさせられる作品です。

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