死んでも公務員辞めないから!マジで、ホントに! [Viva!公務員]

2016年 イタリア

あらすじ

 ザローネの父は、終身雇用と手厚い福利厚生が保証され、あくせく働くことなく悠々自適の毎日を送る公務員だった。そんな姿を見て育ったザローネもまた、父と同じ公務員になった。ザローネにとって公務員とは「公僕」ではなく、国から手厚い恩恵を受けられる特権階級以外の何ものでもなかった。

 そんな生活を満喫していたザローネの身に突然の不幸が襲った。大臣の改革の一環で公務員の大リストラが始まったのだ。リストラ候補者が退職金の上乗せを条件に次々と辞職願を提出したが、ザローネは公務員の地位に執着し、ただ一人拒否した。リストラ責任者であったシローネ部長は、ザローネを辞職に追い込むため、僻地に転勤させたが、ザローネの固い決意は変わらなかった。部長は最終手段としてザローネに北極の研究センターに転勤を命じた。さすがのザローネも怯んだが、研究センターで一緒に働くことになった美人の環境学者のノービリに一目惚れし、俄然やる気になってしまった。

 ザローネとノービリは恋に落ちた。週末にノルウェイにあるノービリの自宅に招待されたザローネは、そこの住民達の「市民的な生活」を知り、自分の常識がズレていたことに気付いた。ノービリが研究のため世界中を駆け巡り、現地で恋仲となった男との間にできた連れ子がいることに驚かされながらも一時は公務員を辞め、ノービリと共にノルウェイで暮らすことも考えた。しかし日が昇らない長い冬を過ごし、ホームシックになってしまった。

 結局、ザローネはノービリ(とその連れ子達)を連れてイタリアに戻ったが、トラブル続きで順調とはいかなかった。ノービリから公務員という地位か自分のどちらかを選択しろと迫られ、ザローネは躊躇なく公務員であることを選んだ。

 ノービリが去ったザローネの元に吉報が舞い込んだ。元の職場への復帰が認められたのだ。ザローネの粘り勝ちだった。何事もなかったかのように元の生活に戻ったザローネだったが、日に日にノービリを失ったことを悔やむようになった。

 そんなザローネの元にノービリから電話があった。ザローネの子を身篭ったというのだ。ザローネは早速ノービリが向かったアフリカへ飛んだ。ノービリと再開したザローネがした決断とは。

感想

  コミカルな雰囲気でラッピングされていますが、根底にあるのは強烈なシニシズムです。しかしビューワーの多くは制作側の真意に気づくことなく「いい話だった」と思うでしょう。嫌味や説教臭さを感じさせず社会を皮肉る、風刺物、かくあるべしだと思いました。一皮剥くと全然別の本性が現れるという本作の作りの妙には感心しました。

 公務員がお手盛りで自分たちを保護する制度を作り上げ、働かずに安楽に耽るなど言語道断ですが、どの国も多かれ少なかれそういった傾向はあるものです。我が国でも、身分保障は公務の中立性が権力によって歪められないようにするための制度であるのに、そのことを忘れている公務員が少なくないことは嘆かわしく思うところですが、この作品で描かれるイタリアの公務員像と比較すると断然マシに見えます。それくらい堕落しきっています。

 視点を変えてザローネという人物を中心に観てみると、公務員という職業に就くことこそが自分の人生だと決め付けていたがために、全くろくでもない人間になってしまっていましたが、生来もっと豊かな人生を送る素質に恵まれていたのでしょうね。そして公務員制度改革という荒波をもろに被り抗い続け、ふとそれを諦めた時に本来の自分に気付いたのだと思います。

 公務員という職業に限らず、社会生活を営む人の大多数が「今の生活」こそが守るべきものであると自分に擦り込み、楽しくもなく嬉しくもない毎日を送っています。ベストセラー「チーズはどこへ消えた?」に言わせれば、現状に安穏としていては素晴らしい人生を歩むチャンスを掴めないといったところでしょうが、のっぴきならない事情でもない限りなかなかそう思い切れないものです。それに、”本当の自分”を夢想しているだけの人生の方が意外に幸せなのかもしれませんしね。

 フェリーニ等巨匠が去ったイタリア映画界はなんとなく元気がないように思っていましたが、偏見に過ぎませんでした。

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