幸せは、まだそこにある [我らの生活]

2010年 イタリア

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あらすじ

 レンガ職人として日々建設現場で働くクラウディオ。妻エレナと2人の子供とともに幸せな日々を過ごしていた。そして家族がまた1人増える日もそう遠くはなかった。

 ある日クラウディオは現場監督の携帯電話が、現場の穴の底に落ちているのに気づいた。しかしそこで彼は携帯電話の下に埋もれていた男の死体を発見した。動揺した彼は、警察に通報することなく密かにその死体を深く埋めた。直後は動揺していたクラウディオだったが、時間とともに気持ちは薄れていった。

 休日は兄のピエロの家に兄弟で集まるのが習慣になっていた。その日もクラウディオは家族と共に兄の家で皆と食卓を囲んだ。家に帰る途中、突然エレナが産気づいたので、クラウディオは病院へ連れて行った。すぐに赤ん坊に会えるだろうと待っていたが、いつまでも呼ばれなかった。そして処置室から出ていた医師から妻の死を告知された。幸せが突然消えた。息子2人と赤ん坊を残して最愛の妻は逝ってしまった。

 3人の子供を自分一人で育てなければならないというプレッシャーがを金の亡者にした。彼は現場監督にレンガ工事だけでなく現場を全部請け負わせて欲しいと申し出た。渋られると死体のことを引き合いに出して強引に迫った。

 クラウディオは仕掛かり中のビル工事現場を用意してもらった。しかし彼は下請工事のノウハウなど全くなかった。だから当面の資金が必要なことすら知らなかった。ヤクの売人をやっている友人のアリから金を借りた。その金はヤバい組織のものだった。

 クラウディオは不法移民を雇い、なんとか現場を動かし始めた。彼は子供たちをアリに預け工期に間に合わせようと奔走した。しかし作業員達は不満ばかり言っていて、工事はなかなか捗らなかった。追い討ちをかけるように資金不足に陥った。給料も支払えなくなり、作業員が全員いなくなってしまった。完全に八方塞がりだった。

 そんなクラウディオに手を差し伸べたのは彼の兄と姉だった。金をかき集めてくれた兄弟の愛情に涙をこらえることができなかった。はその金を元手に、相場の3倍の報酬を支払い腕の確かな職人達を雇った。採算度外視となってしまったが、無事工事を終えることができ、兄弟に金を返すこともできた。

 久しぶりに自宅で子供達と一緒に過ごしていると、息子達が怪しげなことをしていた。聞けば念を送っていなくなった人を呼び戻すのだと言うのだ。誘われるがままにクラウディオも息子達と手を繋ぎ祈った。するとドアをノックする音が聞こえた。まさか祈りが通じてエレナが戻ってきたのか?急いで出てみると、そこにいたのはアリだった。彼から旅行会社から預かったという封筒を手渡された。それはエレナが手配した家族旅行のチケットだった。そのときクラウディオは気づいた。本当に大切なものは金ではなく愛だということを。

 息子たちに「僕達のこと好き?」と尋ねられたクラウディオは答えた。「大好きだ」

感想

 本作は、妻の不慮の死により自分を見失い拝金主義になりかけた男が、兄弟や子供達の支えによって愛情の大切さを思い出すというストーリーです。イタリア人というと愛、人情、ロマンティストなどという言葉を連想します。しかしそれは遠い昔のステレオタイプなのかもしれません。

 クラウディオ達が新しい家族を迎えるために「イケア」のサイトで家具を物色するシーンやショッピングモールでカートを押して任天堂Wiiを買い与えるシーンなんかを見て、「日本中どこに行ってもロードサイドに並ぶ看板が同じ」どころか「世界中どこに行っても家族の生活様式は同じ」だと感じました。車なんかも今やどこのメーカーも同じようなデザインですしね。それとともに国民性というものも以前よりも希薄になっていることを改めて感じました。

 本作でクラウディオの身に「妻の死」と「現場での死体の発見」という2つの大きな事件が降り掛かります。2つのうち「妻の死」は本作のメインテーマでもあるのである程度描き切っているのですが、「現場での死体の発見」は中途半端だと感じました。

 ストーリーの途中で死体の妻と息子が登場しますが、彼女らの登場を省いてもあらすじとしては成立してしまう位中途半端です。一応、イタリア人の拝金主義に疑問を呈するルーマニア移民という役割があるんですけどね。イマイチ私には伝わりませんでした。

 そう、その拝金主義についても、なぜクラウディオが拝金主義に目覚めたのかが唐突すぎてよく分からなかったという点も残念でした。なので「ある程度描き切っている」という表現にしています。

 いろいろ申し上げましたが、本作は現在のローマでの暮らしの空気感を感じることができるところが良かったです。終わり方がイタリア映画っぽいところも好印象でした。

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