ただ市民のための警官になりたかっただけなのに [セルピコ]

1973年 アメリカ・イタリア

あらすじ

 セルピコは使命感に燃えてニューヨーク市警の警察官になった。しかし彼が目の当たりにしたのは腐敗した警察の実態だった。特に許し難かったことは同僚達が犯罪組織に悪びれもなく賄賂を要求していたことだった。それに加担することを拒否したために、セルピコは浮いた存在になってしまった。

 思い悩んだセルピコは上層部へ密告した。しかし上層部の動きも鈍く、できれば見て見ぬふりをしたいという本音が透けていた。市長への直訴も功を奏さなかったセルピコは、最後の手段として新聞社にリークした。そのリークがきっかけで警察の汚職が大々的に報じられ、蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。

 そんな中、セルピコは危険な麻薬課に異動させられた上に、家宅捜索の際に同僚の援護を受けられずに銃撃されてしまった。

 大怪我を負いながら一命を取り留めたセルピコは、査問会の証言台で警察の悪事を証言した。その証言が、警察の腐敗撲滅の大きな足掛かりとなったのだった。

感想

 実話ベースの話です。

 アメリカの警察ものでは、警官同士の強い仲間意識がよく描かれています。これはお互いの命を預ける以上、強い信頼関係が必要不可欠だということなのだと思いますが、間違ったことに対して「ノー」と言い難いという副作用があります。一種の強力な集団心理と言えるでしょう。

 80年代の名作ドラマ「ヒル・ストリート・ブルース」でも、まだ一部の警官は腐敗していたり、二世の警官が同僚にかつての父親の悪事でなじられるというシーンがありました。アメリカの警官が特に腐敗していた、というわけではなくて、日本も含めそういう悪事が水面下で蔓延っていたというのが、60年~90年代という時代でした。21世紀しか知らない若者が見たら理解不能の世界かも知れません。

 フランコ・セルピコは、証人保護プログラムが適用されていたため住所は非公開(スイスにいたらしい)だったとのことでしたが、主演のアル・パチーノは、本人の元を訪れて役作りをしたとのこと。なんか、ちょっと矛盾しているような……。
 セルピコは、市民のために役立つ警官になりたかっただけなのに、よりによって身内の警察組織という大きな壁と戦う羽目になり、その夢が実現することはできませんでした。警察の腐敗を正すという立派な功績を残したと評価されたとしても、本人の無念は癒されることはないでしょう。

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