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自分を責め続けることでしか、自分を赦すことができない [マンチェスター・バイ・ザ・シー]

 ボストンで便利屋として独り働くリー・チャンドラー。家の修繕、雪かき、ゴミ捨てを繰り返す毎日。そんなリーの元へ故郷マンチェスターの病院から電話が入る。兄のジョーが亡くなったのだ。 ジョーは鬱血性心不全で余命が5~10年と診断されていた。目立った症状がないまま進行し、やがて突然死が訪れる病気だった。そして遂に最後の時が訪れたのだ。
 知らせを受け、リーはずっと避けていた雪解け間近の故郷を訪れた。そして、残された一人息子のパトリックにジョーの死を告げる。最後に見た時、まだ幼かったパトリックは高校生になっていた。
 ジョーの遺言を弁護士から知らされたリーは動揺した。ジョーはリーが故郷に戻ってくることを前提としてパトリックの後見人に指名していたのだ。リーはこれに強く抵抗した。故郷に帰れない理由があったのだ。
 かつてリーも故郷で妻と3人の子供と暮らしていた。しかしまだ若かったリーは、ドラッグや酒をやりながら仲間たちと馬鹿騒ぎをする生活を止められなかった。ある日、いつものように馬鹿騒ぎをした後、火の不始末で火事を起こしてしまい3人の子供を焼死させてしまった。なんとか逃げ出した妻からは激しく罵倒された。取り返しのつかない過ちを犯したリーは故郷を去ったのだった。
 パトリックにボストンに引っ越すよう提案するが、故郷を離れることを拒絶される。ジョーも故郷に戻るつもりはない。しかしながら世話になったジョーの息子を見捨てるわけにもいかない。雪解けが始まり春が訪れる前に、リーは打開策を見つけることができるのだろうか。

どうします?犬のこと大好きになっちゃいますよ [僕のワンダフル・ライフ]

 愛犬がいれば抱きしめたくなってしまうこと必死。犬を飼いたいなと思っていた人は翌日には犬を新しい家族として迎え入れてしまうかも知れない。そんな作品だ。犬の一生は短く、その10歳は人間の年齢にすると55歳くらいだと言われる。イーサンが少年から老年になるまでの間に、ベイリーは何度も転生輪廻(なぜか犬にしかならないが)を繰り返し、そして最後にずっと大好きだったイーサンと再会を果たすというストーリーは斬新。そして、「吾輩は猫である」よろしく犬の一人称視点も非常に効果的。犬好きから犬嫌いまで是非観て欲しい。そして犬を飼おうと思って人は、できればペットショップではなく、シェルターに行って保護犬を引き取ってもらいたい。うちもシェルターから譲ってもらった犬を飼っているけど、本当に利口(したたかでもある)で可愛い相棒だ。この作品を観て、こいつも昔私が飼っていた犬の生まれ変わりかもと、随分前に旅立ったその犬の名で呼んでみたところ、ちょっと意味深な表情で振り向いた

80年代サブカル映画の完成形 [ストレンジャー・ザン・パラダイス]

  ジム・ジャームッシュの出世作であり、映画史に残る名作です。
 その理由は、ストーリーではなく、そのスタイルです。
 全編モノクロ(それも粒子が荒い)映像で綴られていますが、この作品が作られた1984年は、当然カラー映像が主流であり、モノクロ映像はむしろ古臭くて敬遠されていた時代です。そういった時代において、敢えてモノクロ、そして敢えてノスタルジックな字幕や音楽を使っているあたりが、当時は斬新かつスタイリッシュだと評価されたのです。あれからさらに30年近いときが過ぎたデジタル全盛時代の今、銀塩写真やモノクロ写真への懐古趣味が若い世代を中心に復活してきています。この作品が再評価される日も遠くないかも知れません。
 そして登場人物のデカダンス(退廃的)なライフスタイルも魅力的です。誰ひとりとして、健康で長生きしようなんて真っ直ぐで計画的な生き方をしていません。ニコチンとタールの匂いがあちこちにこびりついていた時代、そんな80年代を思い出させてくれます。