これを観て”若気の至り”の代償を知れ! [ミッドナイト・エクスプレス]

1978年 アメリカ

コンテンツ

あらすじ

 1970年10月6日トルコのイスタンブールで起きた事件を題材にした作品。

 ビリー・ヘイズは金欲しさに旅先のトルコから米国にハシシを密輸しようとしたが、搭乗直前に捕まってしまった。そして状況がよく飲み込めないまま警察に拘留された。毛布も与えられない牢獄で裁判を待つビリーのところへ、はるばる彼の父が面会にやってきた。必ずここから出してやると約束してくれたが、状況はそう簡単ではなかった。ビリーは米国に身柄を引き渡されることなく、そのままトルコで裁判を受けることになった。判決は懲役4年半の刑だった。

 異国の地での刑務所暮らしは過酷だった。同郷の囚人ジミー、エリックそしてマックスに助けられながら何とか命を繋ぐ毎日が続いた。ここから出る一番の近道はミッドナイトエクスプレス(脱獄)だと耳元で囁かれたが、「すぐに出してやるから馬鹿なことをするな」という父や弁護士の忠告を守って誘いを断った。

 そうして長い刑期が終わりに近づき出所への期待に胸を膨らませていたビリーに悪い知らせが舞い込んできた。所持ではなく密輸の容疑で裁判をやり直すというのだ。あまりの無茶苦茶な話に激怒したビリーは法廷で怒りをぶちまけた。しかし必死の抵抗も虚しく、改めて懲役30年の刑が言い渡された。

 ついにビリーは脱獄計画に加わることにした。ジミーの情報をもとに地下道につながる壁を探し当て、ある夜計画を実行に移した。計画は順調かに思えたが途中で地下道が塞がれており中断せざるをえなかった。そして改めて計画を練り直している最中、運悪く看守達におもねっていたリフキという囚人に細工した壁を見つけられてしまい、彼の密告によりその自由への扉は閉ざされてしまった。そのことを端に発したリフキとビリー達アメリカ人囚人との報復合戦が始まり、ついにビリーはリフキを殺害した。

 7ヶ月後の1975年1月、ビリーは第13特別収容所に収監されていた。そこにいたのは精神が崩壊してしまった抜け殻のような囚人ばかりだった。そんな環境下におかれビリーも発狂寸前だった。ビリーは刑務所長に賄賂を渡し入院させて欲しいと頼むが、更衣室に連れて行かれ犯されそうになり、揉み合っているうちに刑務所長は頭部を損傷し死んでしまった。

 結末はあっけなく訪れた。ビリーはそのまま更衣室にあった刑務官の制服を着ると、長く囚われていた刑務所の通用口から、気づかれることなく脱出できたのだった。

感想

 話としては、ナショナルジオグラフィックの「史上最悪の地球の歩き方」でやっているような内容です。当時は今ほどテレビメディアが発達していなかったので、異国の地でのアメリカの若者の過酷な5年間は映画として伝えられ、おそらく多くの観客に衝撃を与えたことでしょう。

 題名のミッドナイトエクスプレス(夜間特急)は、あらすじでも触れましたが「脱獄」の隠語で、刑務所から出るための最短手段という意味です。ラストは「脱獄」という言葉のイメージとはかけ離れた、あっけなく静かなものでしたが、これもまた脱獄に違いありません。仮に千載一遇のチャンスが訪れたとしても、それを渇望していない人間はそれがチャンスであることに気づかず、みすみす見過ごしてしまうものです。これだけ長い間刑務所暮らしをしていたら感化されてしまって、脱獄できるチャンスがあったのにぼんやり突っ立ってたなんてことがあってもおかしくありません。だからビリーの脱獄も、彼が刑務所を出たいという強い意志を持ち続けたからこそ成功したのだと思います。

と、ビリーを格好よく評価してしまったが、発端はハシシを密輸しようとしたことだから自業自得に他なりません。悪いことをするのはやめましょう。特に海外では。

 またラストは原作本では、

 ヘイズが島の別の刑務所に移され、そこから最終的にディンギー(小型のボート)を盗み、マルマラ海を横切る荒れ狂う嵐の中で17マイル(27 km)を漕ぎ、徒歩とバスでイスタンブールに移動し、その後、国境を越えてギリシャに入った。

Wikipedia機械翻訳

 となっているとのことです。こちらの方が血と汗と涙の結晶といった感じでそれなりに感動できると思いますが脱獄ものにありきたりな展開のようにも思えるので、私は本作の「あっけない感じ」のラストの方が好きです。ここは好みの問題ですね。

 なお主演のブラッド・デイヴィスは、AIDSに罹患し41歳でお亡くなりになったそうです。その2年前に出演したロザリー・ゴーズ・ショッピングでの元気な姿が嘘のようで悲しいですね。合掌。

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