あーあ、何やってるんだろうな、と思うこともある@紛争地域 [ロープ-戦場の生命線-]

2015年 スペイン

あらすじ

 1995年バルカン半島の何処かで活動する「国境なき水と衛生管理団」のメンバーとして活動するマンブルゥは、井戸に放り込まれた水死体を引き上げるべく、彼の率いるメンバーと悪戦苦闘していた。すでに和平合意が成立し、国連の平和維持軍が派遣されていたが、紛争中に仕掛けられた地雷の撤去も終わっておらず、地域の生活用水源となる3つの井戸のうち、2つは地雷のために使用できなかった。そして残る1つの井戸に何者かが死体を放り込んだのだ。

 マンブルゥ達は、井戸の中で死体にロープを括り付け、車で牽引して引き上げようとしたが、死体の男が肥満体であったため粗末なロープは敢えなく切れてしまった。マンブルゥは別働隊のメンバーのビーに、付近の村の商店でロープを調達するよう無線で依頼した。指示を受けたビーは豪快に車を飛ばして店に行くが、店主はそこに並べてあるロープをなぜか断固として売ろうとしなかった。ビーは食い下がるが、周囲の殺気に身の危険を感じて引き下がることにした。たかがロープ1本、されどロープ1本、ビーはほうぼう探し回るが、どうしてもロープを手に入れることができなかった。

 その頃マンブルゥは国連軍の保安ミーティングに参加していた。そこには彼の活動を査察するために訪れた美人査察官のカティアの姿があった。マンブルゥは彼女と昔付き合っていたことがあった。どうにも気まずかったが、マンブルゥは彼女を基地まで連れて行くことになってしまった。ミーティングも散々だった。最近新たにメンバーに加わったばかりでまだ正義感に燃えているソフィーが、なんとか井戸の死体を国連軍が排除するように仕向けるために「死体に地雷が取り付けられている」と嘘を吐いたのだ。

 ビー達と合流したマンブルゥは西に東に車を走らせ、なんとかロープを手に入れた。そのロープは紛争による民族浄化に怯えた住民が首吊り自殺に使ったものだった。件の井戸に戻って引き上げ作業を再開していたそのとき、国連軍がやってきた。地雷がある以上国連管轄となるので、マンブルゥ達には死体を引き上げる権限はないと通告された。ソフィーの嘘が仇となったのだ。無常にも、途中までウインチで引き上げていた死体は再び井戸の底へ落とされた。

 昼夜努力した結果がこれだった。マンブルゥは虚しさに苛まれた。もう嫌だ。それでも彼らは人道支援のために明日も明後日も走り回るのだった。

感想

 紛争地域で活動する人道支援団体というと、問題が発生したところにスッと現れてスマートに解決していくというイメージを抱くかもしれませんが、実際にはそんな格好いいものではないと本作は教えてくれます。資金は限られていて、機材や道具もあり合わせのものを使うしかないし、現地の人間が皆協力的というわけでもなく、むしろ命が狙われることすらあるということを。

 当人達にしても、最初は困っている人々のためになればと思って活動していても、人生の全てを捧げるほどに、果たして活動の目的が他愛のためなのか自愛のためなのか曖昧になってきてしまうようです。それを自己満足というのは簡単ですが、そうとでも思わないと報われない仕事なのだろうと同情してしまいます。自分の人生を費やして、見知らぬ土地で地雷の危険に晒されながら1本のロープを探し続け、挙句に全ての努力が水泡に帰す、そんなことの繰り返しなのですから。

 ちなみに、この作品のもう一人の主人公である井戸に放り込まれた肥満体の死体。意外な形で井戸から出てきます。このラストがこの作品をさらにシニカルなものに仕上げています。信条とか思想といった高尚なテーマではなく、リアルな人道支援の現場の一コマを切り抜いたモチーフもユニークな本作は、一見の価値ありです。

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