安全な旅行のためにきちんと準備しましょう [ストランデッド]

2001年 スペイン

 ペロス船長率いるクルーが人類初の有人火星着陸に挑んでいた。

 着陸船には6人のクルーが乗り込んでいた。しかしソフトウエアのバグで不時着してしまい、その衝撃で船長は死亡してしまった。

 残されたクルーは何とか希望を繋ごうとするが、エンジニアで現実主義者のルカは、全員が生き残る方法はなく、最大限楽観的に見ても救助が来るまでに生存できるのは2人だけだと断言した。

 副船長のスザンナはその2人にルカと医師のジェニーが適任と判断し、自らを含め他の3人が船を立ち去ることを決定した。事実上の死の宣告にハーバートとフィデルは激しく抵抗したが、結局スザンナの決定に従った。

 スザンナ、ハーバートそしてフィデルの3人は、宇宙服に身を包みマリネリス峡谷に向かうことにした。終着点は酸素ボンベが空になったとき、すなわち死だった。マリネリス峡谷へ向かったのは、そこに何かの変化の兆候があったからだった。しかしそれを確かめたところで生存の可能性はなかった。3人は火星にやってきたことが無意味ではなかったと思いたい一心で前進した。

 最初に死んだのはハーバートだった。残った2人は峡谷を下り続け谷底まで到達した。そこは一見袋小路だったが、スザンナは洞窟があることに気づいた。洞窟の中を進むうちに、気圧が上がり始めた。酸素の残りが僅かだったフィデルがヘルメットを脱ぐと信じられないことに呼吸できた。

 さらに洞窟を進むと壁一面に彫刻が施されていた。知的生命体の所業であることは明らかだった。2人は迷宮のような洞窟の探索を続けるが、途中でフィデルは不慮の事故で死んでしまった。独り残されたスザンナの運命は……。

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 孤独の中、スザンナは部分的に空気が存在する迷宮を彷徨った。やがて壁にもたれかかった何かを発見した。近寄ると人間に似た生命体の死体だった。その先には同じような死体が並んでいた。そしてその先に洞窟の出口があった。

その頃、着陸船ではルカがスザンナからの信号に気づいた。彼女から送られてきた座標に向かうと、そこは空気と水が存在する空間が広がっていた。

信じられないが3人はそこで救助を待つことにした。

そこにあったのはどんな文化だったのだろうか、高度な文化がなぜ滅んだだろうか、と思いながら。

感想

 火星に有人探査に行くのに、バックアッププランが全く無いという恐ろしい話です。冷戦時代の米ソのように競い合うように宇宙開発をしていた時代であればともかく、なぜそのような無謀な計画にゴーサインが出たのかは判りません。

 また、救助が来るまで早くて2年程度と彼らは見積もっていますが、ロケットを作ってから飛ばすまでの時間が考えられていないような気もします。

 マリネリス峡谷は1971年に火星探査機マリナー9号により発見された峡谷で、ノクティウス迷路等入り組んだ地形が特徴的とされていて、確かに何か住んでいそうな感じです。しかし、スザンナが洞窟を見つけるまでは、ただの岩場が続くだけであり、生命の営みがあったことを示唆する痕跡は全くありません。

 スザンナは洞窟の壁一面の彫刻にも、火星人らしき生命体の無数の死体にも、大して驚きも関心もせず前進し続けます。そして人間が生存可能な環境に到達するわけですが、もう少し好奇心を持てよとツッコミたくなります。まるでスピードクリアを目指してひたすら走り続けるスーパーマリオでも見ているかのようです。

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 そして最後のシーン。3人はすっかり安心しきって宇宙服も脱ぎ捨ててくつろいでいるのですが、観ているこっちの方が、本当に夜になっても大丈夫なの?とか、太陽風とか宇宙放射線とか大丈夫なの?とか、地球からの救助隊が判るように自分たちがいる場所を記したメモをちゃんと置いてきたの?等といろいろ心配になってしまいました。

 ナショナルジオグラフィックの「マーズ 火星移住計画」の方がずっと本格的です。それだけ、テレビドラマ(テレビ映画?)の進歩がすごいとも言えるのかもしれませんが、まあ夢が溢れて溢れていてこれはこれで楽しめました。

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