自己満足な人生を送る人、付き合わされる人 [ラスト・ディール 〜美術商と名前を失くした肖像〜]

2018年 フィンランド

あらすじ

 画商のオラヴィ・ラウニオは、人生の全てを仕事に捧げたが報われそうもなかった。永年守り続けてきた画廊も閉めなければならないくらい、経済的に行き詰まっていた。妻には先立たれ、仕事にかまけてないがしろにしてきた娘とは疎遠になっていた。すっかり年老い、現実を向き合わなければならないことは分かっていたが、最後になんとか一花咲かせたかった。

 そんなある日、隣のドゥブロフスキー画廊でオークションの下見会が開催された。自分の店とは違って、ドゥブロフスキーの店は繁盛していた。何気なく店の中をのぞいたオラヴィは、作者不明の1枚の肖像画に心を奪われた。彼はそれが巨匠イリヤ・レーピンの作品のように思えた。同業者の仲間にはリスクが高すぎると止められたが、その作品にすっかり魅了されたオラヴィは、その絵を手に入れるため、ほうぼうに金の無心をした。

 そんな彼のところに疎遠にしていた娘のリーから、息子のオットーの職業訓練実習の受け入れ先になってほしいと頼まれた。最初は渋ったオラヴィだったが、やってきたオットーが予想外に機転が効くことが分かり、謎の絵の調査のパートナーとして欠かせない存在になった。しかし残された時間はわずかしかなく、ドゥブロフスキー画廊のオークションまでにその絵の正体にたどりつくことができなかった。オークション当日、オットーは絵の持主をインターネットで探し出しその人物の元へ急行した。一方のオラヴィはオークションに出席していた。そして彼は思い切った行動に出た。全財産でも足りない額で絵を落札したのだ。それを見た画商仲間はついにやけっぱちになったのかと心配したが、オラヴィはオットーからの連絡で、それがイリヤ・レーピンの作品だったことを知っていたのだ。

 画商として最後の大仕事を終えつつあるオラヴィだったが、まだ問題が残っていた。落札した作品を買い取る資金が足りないのだ。ついにオラヴィは、画廊を譲渡することでその金を用意した。人生の全てを捧げた店は呆気なく空っぽになった。全てを手放したが、その代わりに自分の画商としての集大成に相応しい大作を手にすることができたことに満足していた。あとはそれを売却するだけだった。

 しかしオラヴィが落札した作品が大変な価値があるものだと知ったドゥブロフスキーが、オラヴィが手にした絵を安く買い戻すため、事もあろうに「真贋が定かではない」という偽の噂を広めた。その噂によって買い手がつかなくなったことにオラヴィは酷く落胆した。最後の最後で画商としての大願が潰えたのだ。そして独り自宅で残務整理をしている間に急死してしまった。

 遺品整理をしていたリーのところにドゥブロフスキーが弔問を装って訪れてきた。そして例の絵の買い戻しを申し出た。絵の価値も彼の人柄も知らない彼女は、親切心からの申し出だと思い絵を譲ることにした。

クリックするとラストが表示されます(ネタバレ注意!)
 そこへ偶然その絵の価値を知るオラヴィの画商仲間がやってきてドゥブロフスキーの悪巧みを阻止した。
 絵の裏にはオラヴィの遺言書が挟まれていた。そこには「絵をオットーに譲る」と書かれていた。そして娘への謝罪も書かれていた。「もっとお前のことを考えてやるべきだった」と。

感想

 本作は、オラヴィの本人目線から見ると、心血を注いできた生業を最後に開花させて人生を全うしたという美談ですが、彼の娘の目線から見ると、独善的な利己主義者であり最低の父親のろくでもない半生譚としか思えないでしょう。その二面性がうまく描かれてて、軽薄なヒューマンドラマに終わっていない点が良いと思います。おそらくラストシーンを観ても、オラヴィという男の人生に対する評価は賛否両論だと思います。

 あまり身近でない画商の世界を垣間見えるという点でも、興味深い作品でした。タイトルやポスターからはミステリー要素があるように思えるかも知れませんが、本作は基本的に地味な作風です。鑑賞者の心を無理やり揺さぶろうとしない、単館上映向けの作品が好きな方に特にお勧めします。

  最後までお付き合いいただきありがとうございました。 

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