俺たちはこの町で生まれ育って死ぬんだ。当たり前だろ?そんなこと [ゴッド・タウン]
2014年 アメリカ
あらすじ
ゴッツ・ポケットという小さな町の住民達の殆どは、生涯、町の外の世界を知ることはない。そして皆んな小悪人で卑怯だ。
ミッキーはジーニーと再婚するためにその町に引っ越してきたばかりだった。ジーニーにはレオンいう名の前夫との間にできた息子がいた。レオンはドラッグをやり、勤務先の工場では人種差別的な発言を繰り返す鼻つまみ者だった。
ミッキーは冷蔵車で肉を運搬する仕事をしていた。仕事は肉屋のバードからもらっていた。そのバードはマフィアへの借金の返済で首が回らない状態だった。
ある日、レオンが勤務先の工場でいつものように黒人の同僚を罵っていると、その男に頭部を棒で撲打され死んでしまった。その場に居合わせた工場の従業員たちの間では、鼻つまみ者のレオンの自業自得ということで意見が一致したので、「昇降機が激突して死んだ」と口裏を合わせることにした。
我が子を失ったジーニーは悲しみに暮れるが、義理の関係しかないミッキーは彼女に共感しきれなかった。それでもジーニーのためにも葬儀をしなければならないと考え、町の葬儀屋へ行くと予想外に大金が必要なことが分かった。町のバーの常連客がカンパしてくれたが、まだ金は足りなかった。なんとか増やそうと競馬で賭けたが、外れて全て失ってしまった。
あせったミッキーは、葬儀屋には後払いで支払うからなんとか葬儀は予定どおり執り行って欲しいと頼みに行くが、逆に預けていたレオンの遺体を路上に放り捨てられてしまった。仕方なくレオンの遺体を自分の冷蔵車に乗せたまま、車を売却しようと中古車屋に行くが、中古車屋が買取前に試運転している間に事故を起こしてしまい、そのはずみでレオンの遺体はまたしても路上に放り出されてしまった。レオンがその事故の犠牲者だと勘違いして通行人が騒ぎだしたので、ミッキーはレオンの遺体を置き去りにしてその場を立ち去るしかなかった。
一方ジーニーは、レオンに死因に何か裏があると考えていた。レオンの死の記事を書くために取材に来た新聞社のコラムニストのリチャードに、真実を明らかにして欲しいと懇願した。そんなジーニーに対してリチャードは良からぬ欲情をもよおし、言葉巧みに誘い出すと彼女を口説き関係を持ってしまった。
ミッキーは冷蔵車を中古車屋に買い取らせると、葬儀屋に行きレオンの葬式を手配した。疲れた体でバーに行くと常連客に「ジーニーとリチャードが出来ているという噂が流れている」と耳打ちされた。ミッキーは息子の死の真実を調べてもらっているだけだと否定したが、それが単なる噂ではないと察した。
家に帰るとジーニーが、レオンが路上で交通事故で死亡したという警察からの連絡で取り乱していた。ミッキーはことの次第を話したがジーニーの怒りは収まらなかった。彼女の「ここで暮らすしかないのに、みんなに知られてしまう」という言葉に、ミッキーは「もう何もかも知られているさ」と静かに返した。
リチャードのコラムが新聞に掲載された。それはレオンの死に絡めて閉鎖的なゴッツ・ポケットの住民たちを揶揄するような内容だった。リチャードにその気はなかったとしても、住民たちにはそうとしか思えなかった。リチャードに対する住民の反感が高まっている中、本人がバーに姿を現した。彼はたちまちバーにいた男達に連れ出され、路上で執拗に暴行を受けた。居合わせたミッキーは止めようとするが「よそ者は口を出すな」と全く耳を貸してもらえなかった。
男達が立ち去ると、そこにはボロ雑巾のようになったリチャードが横たわっていた。
感想
アメリカ人というとフロンティアのイメージがありますが、実際には生まれ育った州(町)から全く出たことがない人も数多いという話を聞いたことがあります。隣町までの距離も日本とはスケールが違うので、そういった人は日本人よりも多いかもしれません。そんな国ですから、この作品に出てくるような町は決して特殊ではなく、無数にあってもおかしくないでしょう(ホラー映画によくある閉鎖的な町の設定も「あるある」ネタなのかもしれませんね)。
ストーリーは、普段は喉元まで出かかっている排他主義が、レオンの死をきっかけに噴出するというもので、他所者が知ったような口を聞くと痛い目にあうということを教えてくれます。アメリカ人に限らず、日本を含めどの国でも郷土愛に溢れている人はいるわけで、そういった方々を見識が狭いなどと批判するのは愚かだということですね。
なお、主演のフィリップ・シーモア・ホフマンは、2014年に46歳の若さで複合薬物中毒で亡くなったとのことです。数々のヒット作にも出演していた人気俳優でしたが、アメリカは薬物で命を落とす方が多いですね。
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