生まれながらに幸せになることを許されない命がある [バルタザールどこへ行く]

1966年 フランス

あらすじ

 ジャックとマリーは幼なじみで、子供の頃から将来を約束し合うほど仲が良かった。農場で生まれたロバはバルタザールを名付けられ、2人に可愛がられた。

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可愛がられる幼いバルタザール

 そんな幸せな日も長くは続かなかった。大きくなったバルタザールは、当時の他のロバと同じように荷馬車を引かされるなど過酷な労働を強いられた。以前からマリーに想いを寄せていた不良のジェラールは、バルタザールを利用してマリーに近づいた。周囲の反対を無視し、マリーはジェラールと一緒になるために家を出た。

ジェラールに尾に火をつけられ必死で走るバルタザール

 恋愛ごっこに夢中のマリーとジェラールにろくに世話をしてもらえなかったバルタザールは、病気になってしまい安楽死させられそうになった。その間際にバルタザールを救ったのは、ロバで観光客を運ぶ仕事を生業にしてた飲んだくれのアルノルドだった。アルノルドによって一命を取り留めたバルタザールだったが、次に始まったのは酔ったアルノルドに殴られる酷い日々だった。しかしまた転機が訪れた。アルノルドが落馬して死んでしまったのだ。

 バルタザールは市場に売りに出され、ある男に買われた。そこでも来る日もくる日も鞭打たれ重労働を強いられる辛い日々が始まった。ある雨の日、その男のところへずぶ濡れのマリーが一晩の宿を求めて訪ねてきた。マリーはジェラールとも別れ、住む処もなくボロボロになっていた。その男はマリーを泊めてやると、翌朝彼女を両親の元へバルタザールとともに戻してやった。

飼い主が変わっても重労働の日々は変わらない

 家に戻ったマリーは幼なじみのジャックに求婚された。汚れてしまった自分はジャックに相応しくないと拒んだが、諦めないジャックに心を打たれ新しい人生を踏み出すことにした。しかしマリーはジェラールの仲間に辱められ、行方をくらませてしまった。さらに我が子の失踪にショックを受けたマリーの父親も健康を損ね亡くなってしまった。

投げやりなマリー

 ある夜、バルタザールはジェラールにこっそりと連れ出されると密輸品を背負わされ、国境に向かって歩かされた。その道中、突然銃声が鳴り響いた。ジェラール達は一目散に走り去ったが、取り残されたバルタザールに1発の銃弾が突き刺さった。バルタザールは痛みに耐えながらあてもなく山中を彷徨うが、ついに力尽き絶命するのだった。

感想

 自動車が普及する前、貨物運搬にはロバが日常的に使われていました。この話は、自動車が普及しロバがその役割を終えつつあった時代の話です。荷役用の道具に過ぎないと考えられていたロバでしたが、決してそれを運命として甘受しているわけではなく、他の生命と同じように幸せを渇望しているのだという訴えがバルタザールの眼差しを通じてひしひしと伝わってきます。セリフやモノローグの助けを借りずにその心情を感じることができるのは、常識的には製作陣の努力の賜物と言うべきですが、私はバルタザール役のロバの名演技だということにしたいと思います。

 あらすじでは割愛しましたが、バルタザールの人生のハイライトは、アルノルドから脱走したときに迷い込んだサーカスで、天才ロバとして皆の喝采を浴びたひとときでした。バルタザールは、利口だったのに、その時代にロバに生まれてきたというだけで、ただ重労働を強いられるだけの生涯を送る羽目になったのです。現代に生まれていれば、利口で愛嬌もあるバルタザールはちょっとした人気者としてチヤホヤされたことでしょう。人間だけでなく、あらゆる生命にとって幸せになれるかどうかは”タイミング”という運次第だとつくづく思いました。そして観ているうちにいつの間にか「これは寓話ではないか」と思いを馳せていました。

サーカスの一員として活躍するバルタザール

 やや説明不足なところがあり、ストーリーを掴みづらい点はありますが、マリー視点ではなくバルタザール視点で観れば、それすらも人間の都合で翻弄されるバルタザールの境遇を描くための計算なのかと思える。さようなら、バルタザール。

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