Monthly Archive: 2020年2月

超ハイセンスロードムービー、なのか? [レニングラード・カウボーイズ モーゼに会う]

 トンガリリーゼントにトンガリシューズがトレードマークのバンド、それがレニングラードカウボーイズ。ツンドラの荒野で活動するが、そもそも観客がいない。成功を夢見て、悪徳マネージャー・ウラジミールに命じられるがまま、一行はアメリカへ旅立つ。
 アメリカに到着して早速関係者に売り込むがロシア民謡が受け入れられるはずもない。お情けでもらったメキシコの結婚式での演奏の仕事のために、中古車を買ってアメリカ大陸縦断の旅が始まる。道中、ロックンロールなど新たなレパートリーを加えながら、飛び込みライブで日銭を稼ぎながら旅を続けるが、全てウラジミールに搾取されメンバーはロクな食事も与えてもらえない。

ツンドラの荒野が産んだ最強のビジュアル系バンド [レニングラードカウボーイズ・ゴー・アメリカ]

 トンガリリーゼントにトンガリシューズがトレードマークのバンド、それがレニングラードカウボーイズ。ツンドラの荒野で活動するが、そもそも観客がいない。成功を夢見て、悪徳マネージャー・ウラジミールに命じられるがまま、一行はアメリカへ旅立つ。
 アメリカに到着して早速関係者に売り込むがロシア民謡が受け入れられるはずもない。お情けでもらったメキシコの結婚式での演奏の仕事のために、中古車を買ってアメリカ大陸縦断の旅が始まる。道中、ロックンロールなど新たなレパートリーを加えながら、飛び込みライブで日銭を稼ぎながら旅を続けるが、全てウラジミールに搾取されメンバーはロクな食事も与えてもらえない。

「生ききった」と思いながらこの世を去りたい [幸せなひとりぼっち]

 人は皆、いずれ老い、天寿を全うする。目の前にいる老人も、かつて赤ん坊であったり若者だったときも当然あったはずなのに、年下の者は視覚に惑わされ、そのことを忘れてしまいがちだ。この作品ではオーヴエという一人の老人の半生を垣間見ることで、そのことを思い出させてくれる。オーヴエの人生を俯瞰すると幸せな時期よりも不幸な時期の方が多い。しかしオーヴエ自身はとても幸せな人生だと思いながら、この世を去ったことだろう。ラストを観ればその理由はわかる。しかし敢えてここでは書かない。是非皆さんの目で確かめて欲しい。
 そうそう、老人ホームでまるで幼稚園のように絵を描かせたりしているのを見ると、人生を経験してきた先人を蔑んでいるようにしか思えない。私がホームに入らざるをえなくなる頃には、日中は個室で映画鑑賞など好きなように過ごさせてもらい、夕方からは酒が飲めるバーがあるようなホームができていて欲しいものだ。そんなヤツはホームに入る必要がない?確かに一理あるが孤独死はイヤだなと思うのだ。将来AppleWatchに孤独死お知らせ機能がついていれば、そんな心配とも無縁になるが。

結婚という陰謀 [エレナの惑い]

 エレナは息子のセルゲイを援助をしてやってほしいとウラジミルに頼むが、息子に甘すぎると拒絶される。確かにセルゲイは妻や子供を養わなければならないのに働こうとしない。それでもエレナは息子が可愛いし、孫にも立派に育って欲しかったので、資産家のウラジミルから援助を受けられなくとも、自分の年金を与えていた。
 結婚とは怖いものだ。ほぼもれなく結婚相手の血族や親族もついてくるからだ。さらに熟年同士の結婚は、若い頃のそれとは違ってお互いの社会的地位がほぼ確定しているから、さらに打算的になりがちだ。特に経済的格差がある場合、持っている側は自分が一方的に奪われる立場にあることに注意し、覚悟しなければならない。そんな教訓を得ることができる作品だ。
 冒頭シーンは、ただ静寂に包まれるマンションの風景を撮影しているだけなのに、とても雰囲気がある。加えて、あえてドアの音や足音といった生活音を目立たせる音声バランスも、どこか冷め得た夫婦生活を感じさせ秀悦だ。
 これから結婚しようとする若者は観ない方がいいと思うが、再婚を考えている中年以上の方々は是非観ることをお勧めする。ひょっとしたら結婚熱が急激に冷めるかも知れない。
 NHKインターナショナルフィルムメーカーアワードがスポンサーをしている。なんだろうと思って調べてみたら、有能な映像作家の発掘と支援を行っている賞とのこと。こういった芸術支援活動は大いに賛成(作品に口出しをしないことが条件)だが、その前に受信料金を下げるべきではないか。mo

どうします?犬のこと大好きになっちゃいますよ [僕のワンダフル・ライフ]

 愛犬がいれば抱きしめたくなってしまうこと必死。犬を飼いたいなと思っていた人は翌日には犬を新しい家族として迎え入れてしまうかも知れない。そんな作品だ。犬の一生は短く、その10歳は人間の年齢にすると55歳くらいだと言われる。イーサンが少年から老年になるまでの間に、ベイリーは何度も転生輪廻(なぜか犬にしかならないが)を繰り返し、そして最後にずっと大好きだったイーサンと再会を果たすというストーリーは斬新。そして、「吾輩は猫である」よろしく犬の一人称視点も非常に効果的。犬好きから犬嫌いまで是非観て欲しい。そして犬を飼おうと思って人は、できればペットショップではなく、シェルターに行って保護犬を引き取ってもらいたい。うちもシェルターから譲ってもらった犬を飼っているけど、本当に利口(したたかでもある)で可愛い相棒だ。この作品を観て、こいつも昔私が飼っていた犬の生まれ変わりかもと、随分前に旅立ったその犬の名で呼んでみたところ、ちょっと意味深な表情で振り向いた

80年代サブカル映画の完成形 [ストレンジャー・ザン・パラダイス]

  ジム・ジャームッシュの出世作であり、映画史に残る名作です。
 その理由は、ストーリーではなく、そのスタイルです。
 全編モノクロ(それも粒子が荒い)映像で綴られていますが、この作品が作られた1984年は、当然カラー映像が主流であり、モノクロ映像はむしろ古臭くて敬遠されていた時代です。そういった時代において、敢えてモノクロ、そして敢えてノスタルジックな字幕や音楽を使っているあたりが、当時は斬新かつスタイリッシュだと評価されたのです。あれからさらに30年近いときが過ぎたデジタル全盛時代の今、銀塩写真やモノクロ写真への懐古趣味が若い世代を中心に復活してきています。この作品が再評価される日も遠くないかも知れません。
 そして登場人物のデカダンス(退廃的)なライフスタイルも魅力的です。誰ひとりとして、健康で長生きしようなんて真っ直ぐで計画的な生き方をしていません。ニコチンとタールの匂いがあちこちにこびりついていた時代、そんな80年代を思い出させてくれます。