Category: ふーんなラスト

アーティストは表現し続ける。なぜならアーティストだから。 [ペルシャ猫を誰も知らない]

 イランでインディーズロックを演っている若きミュージシャン、アシュカンとネガルは自由に演奏活動できない母国を捨て、国外に活動の場を見つけようとしていた。知り合いのレコーディングエンジニアのババクに相談しナデルという男を紹介してもらう。ナデルは乗り気でなかったが、デモテープを聴いて2人に才能を感じ、希望を叶えるために協力することにした。
 その日から、ナデルの御膳立てで2人の海外での活動準備が始まった。偽造パスポートの手配、バンドメンバーの人選、渡航前の国内ライブの許可の申請など、イラン当局の規制に邪魔されながらも、計画は着々と進められた。
 しかし最後に不運が訪れた。計画の要となる偽造パスポートのブローカーが警察に逮捕されてしまったのだ。その事実を最初に知ったナデルは、強いショックと自責の念にかられ、行方をくらませてしまった。
 一方、そんなことを知らないアシュカンとネガルは、ネガルと連絡がとれなくなったことに一抹の不安を感じながら、間もなく実現する海外での音楽活動に夢を膨らませながら、最後のライブの準備を進めていた。
 ライブ当日、アシュカンのところへネガルの行方がわかったとの知らせが入る。アシュカンとネガルは、その場所へ急行するが……。

80年代サブカル映画の完成形 [ストレンジャー・ザン・パラダイス]

  ジム・ジャームッシュの出世作であり、映画史に残る名作です。
 その理由は、ストーリーではなく、そのスタイルです。
 全編モノクロ(それも粒子が荒い)映像で綴られていますが、この作品が作られた1984年は、当然カラー映像が主流であり、モノクロ映像はむしろ古臭くて敬遠されていた時代です。そういった時代において、敢えてモノクロ、そして敢えてノスタルジックな字幕や音楽を使っているあたりが、当時は斬新かつスタイリッシュだと評価されたのです。あれからさらに30年近いときが過ぎたデジタル全盛時代の今、銀塩写真やモノクロ写真への懐古趣味が若い世代を中心に復活してきています。この作品が再評価される日も遠くないかも知れません。
 そして登場人物のデカダンス(退廃的)なライフスタイルも魅力的です。誰ひとりとして、健康で長生きしようなんて真っ直ぐで計画的な生き方をしていません。ニコチンとタールの匂いがあちこちにこびりついていた時代、そんな80年代を思い出させてくれます。