アーティストは表現し続ける。なぜならアーティストだから。 [ペルシャ猫を誰も知らない]

2009年 イラン

あらすじ

 イランのインディーズロッカー、アシュカンとネガルは自由に演奏活動できない母国を捨て、国外に活動の場を見つけようとしていた。知り合いのレコーディングエンジニアのババクに相談しナデルという男を紹介してもらった。会ったばかりのナデルは乗り気でなかったが、デモテープを聴いた途端2人の才能に驚き、力を貸してくれることになった。

 その日からナデルの御膳立てで2人の海外進出の準備が始まった。偽造パスポートの手配、バンドメンバーの人選、渡航前の国内ライブの許可の申請などなどイラン当局の規制に邪魔されながらも計画は着々と進められた。

 しかし最後に不運が訪れた。計画の要となる偽造パスポートのブローカーが警察に逮捕されてしまったのだ。逮捕の現場を目の辺りにしたナデルは、強いショックと自責の念にかられ行方をくらませてしまった。

 一方、そんなことを知らないアシュカンとネガルは、ナデルと連絡がとれなくなったことに一抹の不安を感じながら間もなく実現する海外進出に夢を膨らませながら、最後のライブの準備を進めていた。

 ライブ当日、アシュカンのところへナデルの行方がわかったとの知らせが入った。アシュカンとネガルは、ナデルの居場所に駆けつけた。そこは危ない香りがする建物だった。ネガルを外に待たせアシュカンが単身建物の中に入った。大音量のクラブミュージックが鳴り響き大勢の人で賑わう中を進むと、そこに酔い潰れたナデルが倒れていた。アシュカンが起こすとナデルは泣き叫び出した。アシュカンが事情が飲み込めずに戸惑っていると、運悪く警察の手入れが入った。念願の海外渡航を前にして逮捕されるわけにはいかなかったアシュカンは窓から外へ脱出しようとしたが、誤って墜落してしまった。

 血まみれで病院へ搬送されるアシュカン。夢は儚くも潰えてしまった。

感想

 イランのミュージックシーンを知ることができる貴重な作品です。イランのミュージシャンは国家権力によって抑圧されている、表現の自由や思想の自由など認められていない、しかし、どんなに不遇な環境にあってもアーティストは表現することを決して止めない、そんな叫びが聞こえてきそうです。

 主役のアシュカンとネガルは、幸いにも資産があったため海外渡航の夢を見ることができました。結局、この夢を現実のものとすることはできないのですが、イランの首都テヘランに数多くいる路上生活者からすれば”夢を見ることができるだけ贅沢だ”といったところでしょう。どんな作品でも同じですがが観る側の立場によって感じ方は全く違ったものになるものです。

 私たち日本人の多くはこの作品を観て、おそらく”自由が規制されているイランの人々は不幸だ”と感じるでしょう。しかし同時に、そう同情できるほど最近の日本で”自由”が保障されているだろうかという疑問が芽生えるのではないでしょうか。なんといっても、我が国には”同調圧力”という大きな力が働いていますからね。

 ところで、この作品に登場するのは、どれも実在のミュージシャンであり、彼らの演奏シーンがこの作品のメインテーマといっても過言ではありません。言い換えればプロモーションビデオにストーリーを絡ませているとも言えます。イランにも才能あるアーティストがいることを知ることができるという意味でも一見の価値ありです。

 公式サイトに登場するミュージシャンの一覧があります。個人的にはThe Yellow Dogsが気に入ったのですが、このバンド、米国に活動の場を移した後、メンバー2人が銃で殺害されたとのことです。何があったのか知りませんが、才能あるミュージシャンがこのような形で世を去るのはとても残念です。

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