音楽のためなら、愛すらも些末事 [ブルーに生まれついて]

2015年 カナダ・イギリス

あらすじ

 若き日のチェットは売れっ子で自信に満ち溢れていた。しかし超一流のジャズクラブ「バードランド」でのステージの後、憧れのマイルス・デイビスから「金や女でプレイを左右されない奴しか信頼しない。お前にはまだこの店は早い」と酷評されたことでその自信は打ち砕かれた。

 それから十数年後の1966年、チェットは自身が主演する自伝映画の撮影現場で共演者のジェーンを口説き交際を始めた。その頃のチェットは既にヤク中で、ドラッグがらみのトラブルを何度も起こしていた。チェットはジェーンを誘ってボーリング場に遊びに行ったが、ドラッグの代金を支払っていなかったために売人に襲われ、トランペットを吹くために必要な前歯を折られてしまった。ミュージシャンとしての前途を失ったチェットは表舞台から姿を消した。

 しかしチェットは諦めていなかった。ジェーンを連れて実家に戻ったチェットはドラッグを断ち、ガソリンスタンドで働きながら、入れ歯でもトランペットを演奏できるよう来る日も来る日も練習を繰り返した。やがてチェットは小さなレストランで演奏活動を再開した。彼の復活に世間は驚いた。やがて彼の再起を支えていたジェーンが妊娠した。それを聞いたチェットは彼女に結婚を申し込んだ。ヤクまみれだった人生から、まともな人生へと変わりつつあった。

 そしてチェットは因縁のバードランドのステージに再び立つというビッグチャンスを掴んだ。チェットはジェーンと共に喜んだ。しかし本番が近づくにつれ、チェットに大きなプレッシャーが襲いかかってきた。思い出される若き日の屈辱。本番当日の楽屋で出番を待つチェットの手には禁断のドラッグがあった。果たしてチェットは再びドラッグの魔の手に落ちてしまうのだろうか。

クリックするとラストが表示されます(ネタバレ注意!)
 ジェーンはステージに現れたチェットの様子がおかしいことに気づくと独り店を去った。控室にはドラッグをやった跡が残されていた。チェットはステージで「ボーントゥービーブルー」を演奏するのだった。

感想・コメント

 有名なジャズトランペッター・チェット・ベイカーの半生を描いた作品です。

 タイトルは「BORN TO BE BLUE」(ブルーに生まれついて)となっていますが、そんなにナイーブな内容ではありません。

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若かりし頃のチェット・ベイカー
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晩年のチェット・ベイカー

 ドラッグ絡みのトラブルを散々起こした後の時代から物語は始まり、既にチェットは四面楚歌になっています。20代からマリファナをやり、30代にはヘロインにも手を出していたのですから、相当のジャンキーということになります。作中チェットは「ドラッグをやると音の中に入れるんだ」と語ります。実際そうなのでしょう。言語と違い音には固有の意味はありません。それ故に音は言葉に出来ないエモーションを表現し伝えることができるわけです。ドラッグは、その抽象的な世界を表現するための感性を覚醒してくれるのだと思います、多分ですが。

 晩年、チェットはヨーロッパに渡り、ヘロイン中毒になりながら最高の作品を残したといいます。チェットにとっては何よりも音楽の神の僕(しもべ)であることが重要だったのだ、と思いました。It Don’t Mean A Thing ,If It Ain’t Got That Swing(スウィングしなけりゃ意味がない)ですね(本作とは関係ありませんがジャズのスタンダードナンバーです)。

It Don’t Mean A Thing ,If It Ain’t Got That Swing(スウィングしなけりゃ意味がない)

 チェット・ベイカーが好きな方やミュージシャンのただれた生き様が好きな方は楽しめるはずです。

 最後までお付き合いいただきありがとうございました。 

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