信仰のためではなく、お金のためでもなく、自分を見つめるための聖地巡礼の旅 [サン・ジャックへの道]

2005年 フランス

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あらすじ

 長男で会社社長のピエール、長女で国語の高校教師クララ、次男で呑んだくれで無職のクロード。兄弟の仲は最悪だった。3人の元へ弁護士から手紙が届いた。

 弁護士によれば、亡くなった母親は、彼女の死後5ヶ月以内に兄弟で一緒に1500km先のキリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまで徒歩での巡礼の旅をやり遂げなければ遺産を相続させない、と遺言書に認めていたとのことだった。ピエールは、金に困っていないしそんなつらいことはしたくないと拒絶するが、家族を養わなければならないクララと、とにかく金がないクロードに押し切られて渋々付き合わされることになった。

 兄弟の旅の同伴者は、ガイドを務めるギー、闘病生活を終えた女性マチルド、女子高校生のカミーユとエルザ、そしてカミーユの同級生のアラブ人のサイードとその従兄弟のラムジーだった。ちなみにサイードはカミーユに片思いしており、彼女が巡礼の旅に参加することを聞きつけ、偶然を装って同じツアーに参加していた。さらに彼はメッカへ巡礼に行くと騙してラムジーを連れてきていた。

 旅の最初から、他のメンバーも辟易するほど、兄弟の口論が絶えなかった。それだけでなく、カミーユとサイードも関係もあまりうまくいかなかった。

 しかし宿泊所、学校、教会などに泊まりながら、山や野原を一日中歩き続ける日々を過ごす中で、一行に一体感と連帯感が芽生えてきた。最初は泣き言ばかり言っていたピエールも黙って歩くようになった。クララは失読症のラムジーに文字の読み方を教えることにやりがいを感じるようになった。サイードとカミーユの関係も深まるようになってきた。俗世での日常と切り離された日々が、エゴを洗い流していくようだった。

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 そして約二ヶ月後、フランスとスペインの国境までたどり着いた。兄弟はギーから、今まで隠していたが本当の相続の条件はここまで来ることだった、今ここでその条件を達成したので旅から離脱して帰ってもいいと言われた。しかし、誰よりもこの旅を嫌がっていた兄のピエールが最後まで旅を続けると言い出し、それにつられるようにクララとクロードも従った。

 更に幾日もの旅を経て、全員が最終目的地である大聖堂に到着した。旅の目的を遂げて喜びを分かち合う一行。しかしそのとき悲しい出来事が……。

クリックするとラストが表示されます(ネタバレ注意!)
 サイードが自宅に電話をかけると、彼が騙して旅に連れてきたラムジーの母親は急逝したことを知らされた。後悔に苛まれながらもサイードはようやくその事実をラムジーに伝えた。悲しみに沈むラムジーをクララが家族の一員として受け入れることにした。兄弟は3人揃って生家を訪問した。仲直りした兄弟の姿を嬉しそうに見つめる母親の姿が見えたような気がした。

感想

 ”サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路は、キリスト教の聖地であるスペイン、ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路。おもにフランス各地からピレネー山脈を経由しスペイン北部を通る道を指す。”(Wikiから引用)

 この映画は、特にフランスのキリスト教徒にとっては、巡礼の旅のガイド的な意味合いもあるのだと思います。そして一行が旅する大自然の風景は、そんな背景を知らずとも美しく感動的です。

 この世を去るにあたって子供達の仲が悪いことだけが気掛かりだった母親にとっては、旅の名目は何でも良かったのだと思います。とはいえ日常とは切り離された環境下でただただ無心に歩き続ければ、さぞかし魂が浄化されることでしょう。ちなみにお遍路様は「通し打ち」と呼ばれる最長距離で1400キロメートルとのことです。大体同じ距離(100キロ差を「大体」と言っていいものか?)ですが、皆さんはどちらかを選びますか?私はキリスト教徒ではありませんが、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路かな。でもやっぱり旅立つかどうかで躊躇してしまいますね。結局は俗世で安穏とするのが一番幸せと決めつけてしまうダメなタイプです。

 旅を終えた後、皆一歩成長してそれぞれの生活に戻ります。個人的にはラストのクララの決断に感動しました。

 美しい旅風景とハートフルな人間関係に包まれた良作です。

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