「生ききった」と思いながらこの世を去りたい [幸せなひとりぼっち]

2015年 スウェーデン

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あらすじ

 オーヴエは町内会の秩序維持のために、住民にルールを守らせることに執念を燃やす頑固爺さんだった。長年連れ添った最愛の妻ソーニャに先立たれた上に、長年の仕事もリストラされてしまった。この世に未練はないと自宅で首吊り自殺しようとしたが、向かいに越してきた移民一家が車をぶつけそうになったため、それを止めるためにやむをえず中断した。オーヴエは移民一家とご近所付き合いするつもりはなかったが、妻であり母であるパルヴァネが人懐こく頼み事をしてくるため、渋々ながら面倒を見る羽目になった。

 オーヴエは元々不器用な性格で人付き合いが苦手だった。そんな彼がなんとか社会に溶け込めていたのは、ひとえに妻のソーニャのお陰だった。二人は偶然出会い結婚した。新婚生活は幸せだった。やがて子宝に恵まれた二人は、出産前の思い出作りのためバスでスペインまで旅行することにした。スペインでは夢のようなひとときを過ごしたが、その帰り道に悲劇が待っていた。バスが崖から転落し、ソーニャは一命は留めたものの流産した上に下半身不随になってしまったのだ。

 ソーニャの夢は教師になることだったが、当時は障害者を教師として雇用する学校はなかった。オーヴエは事故の責任を追及するために各方面に抗議の手紙を送ったが、梨のつぶてだった。オーヴエは怒りが収まらなかったが、ソーニャの「今を必死に生きるのよ」という一言に目が醒めた。過去の自己の責任を追及することよりもソーニャの将来のためにできることをすべきだと気づいたのだ。オーヴエは自力で学校に車椅子用のスロープを作り、車椅子で校内に入ることができないことを盾にして渋っていた学校にソーニャの採用を認めさせたのだ。

 晴れて教師となったソーニャは、問題児を集めた特別学級を受け持った。以来、生徒に慕われる優秀な教師として勤め上げたが、ガンのために半年前にこの世を去ってしまったのだった。

 生きる意味を失ったオーヴエだったが、パルヴァネ達との出会いや疎遠になっていた親友との和解などをきっかけに生きる活力を少しずつ取り戻した。しかし、突然倒れてしまった。

 病院に搬送されたオーヴエは、医師から心疾患が見つかったが命に別状はないと診断された。見舞いに来たパルヴァネが突然産気づいた。無事出産を終えた彼女にオーヴエは、かつてソーニャとともに育むつもりだった子供のために買ったゆりかごをプレゼントした。オーヴエはパネヴァネの家族と過ごす時間が楽しく、幸せな気持ちで日々を過ごすようになった。そして季節は冬になった……

クリックするとラストが表示されます(ネタバレ注意!)
 雪が積もっているのにオーヴエの家の庭が雪かきされていないことに気づくパルヴァネが急いで駆けつけると、オーヴエはベッドに横たわり死んでいた。

 パルヴァネにオーヴエから書き置きがあった。
 葬儀のこと、猫のこと、町内会のルールのことについて書かれていた。
 パルヴァネはオーヴエの遺志に従い葬儀を執り行った。

 オーヴエが列車の座席で目覚めた。向かいの席にはソーニャの姿があった。

感想

 人は皆、いずれ老い、天寿を全うします。目の前にいる老人も、かつて赤ん坊であったり若者だったときも当然あったはずなのに、年下の者は視覚に惑わされ、そのことを忘れてしまいがちです。この作品ではオーヴエという一人の老人の半生を垣間見ることで、そのことを思い出させてくれます。オーヴエの人生を俯瞰すると幸せな時期よりも不幸な時期の方が実は多いです。しかしオーヴエ自身はとても幸せな人生だと思いながら、この世を去れてよかったと思いました。ラストを観ればその理由が分かります。あらすじでは伝わらないその雰囲気を是非皆さんの目で確かめてください。

 ところで、老人ホームでまるで幼稚園のように絵を描かせたりしているのを見ると、人生を経験してきた先人を蔑んでいるようにしか思えません。私がホームに入らざるをえなくなる頃には、日中は個室で映画鑑賞など好きなように過ごさせてもらい、夕方からは酒が飲めるバーがあるようなホームができていて欲しいものです。そんなヤツはホームに入る必要がない?確かに一理ありますが孤独死はイヤだなと思うのです。将来AppleWatchに”孤独死お知らせ機能”がついていれば、そんな心配とも無縁になるでしょうか。

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