身の丈を過ぎた生き方は、我が身を滅ぼす [スカーフェイス]
1983年 アメリカ
あらすじ
1980年キューバのカストロ議長は、アメリカに家族がいるキューバ人125,000人の出国を認めた。その中には本来の対象者ではない犯罪歴がある25,000人も含まれていた。
その中にアントニオ・モンタナ(通称トニー)もいた。難民キャンプに収容されていたトニーは、そこで知り合った男にレベンガという有名な政治犯の殺害計画に誘われた。報酬はアメリカ永住権だった。トニーは躊躇することなく誘いに乗った。そしてレベンガを殺害した。
約束どおりアメリカ永住権を手に入れたトニーだったが、行くあてもなくくすぶる毎日だった。そんなときヘロイン売買の仕事に誘われた。指定された取引場所に仲間と行くと、相手はブツを渡さずトニー達が持ってきた金を奪おうとした。窮地に陥ったトニーだったが、相手を殺害すると金だけでなくブツまで持ち帰った。
トニーはその一件をきっかけにマフィアのボスであるロペスに可愛がられるようになった。ロペスの下で働くようになってトニーの羽振りは良くなった。家族にもいい思いをさせてやりたかったが、母親からは縁を切られた。
やがてトニーは野心のないロペスの手下でいることに満足できなくなった。そんなトニーをロペスの方も危険視していた。ロペスに消されそうになったトニーは、逆にロペスを殺害した。ついにトニーはマフィアのボスに成り上がったのだ。邪魔するものがいなくなったトニーはボリビアの麻薬の有力サプライヤーであるソーサと組み、たちまち巨万の富を手にした。
それまで成功することだけを目標に突っ走ってきたトニーだったが、実際に富を手にすると徐々に虚無感に蝕まれ始めた。誰も信じられなくなり、周囲に当たり散らし孤立していった。
資金洗浄を請け負っていた銀行と手数料の交渉で揉めたトニーは別の業者を使うことにした。しかしそれは警察のおとり捜査だった。容疑者として裁かれることになったトニーにソーサがある提案をした。それはトニーが無罪になるようソーサが有力者に働きかける代わりに、最近ソーサ達を糾弾しようともくろんでいる人物をトニーが暗殺するものだった。
ソーサの提案に乗ったトニーの役割は、ターゲットの車に仕掛けた爆弾を、ソーサの手下がリモコンで起爆できるよう車で追跡することだった。しかし、たまたまその日ターゲットの車にはターゲットの子供も同乗していた。トニーは子供を殺すのは流儀ではないと、土壇場でソーサの手下を殺害して暗殺計画をご破算にしてしまった。
そのことを知って裏切られたと怒り心頭のソーサは、トニーの邸宅を手下とともに強襲するのだった。
さてトニーの運命は……。
感想
スカー(SCAR)は「傷跡」という意味です。題名は「顔に傷のある男」といった意味になるでしょうか。
無一文から組織のトップに上り詰めた男の半生を3時間たらずの尺で描いているのでストーリーは駆け足で進目まぐるしく展開し、さしずめ「ぎゅっと凝縮した半生記」といった塩梅になってます。彼の半生を俯瞰して、人生って長いしその間無数の選択をしているわけだけれども、転機のきっかけとなるのはその中のほんの1、2の出来事なんだなーとつくづく再認識しました。おまけにそのときの選択が正しかったか間違っていたかなんて後にならないと分からないし、そもそもそんな重要な選択をしていると認識していないこともよくあることです。
富さえ手に入れれば幸福な人生が約束されるはずだと信じて疑わなかった男がそれを実現したとき、そこにあったのは幸福ではなく虚無感でした。彼が欲しかったものは、本当に自分が欲しかったものではなくて、「成功者が持っているものを欲しがっただけ」なのかも知れません。スポーツカーは興味ないけれど、富裕層が持っているからフェラーリが欲しいみたいな。だから実際にそれを手にしたところで、満足感も充足感も得られなかったのだと私は思いました。「富を目的としてはいけない」そんなメッセージを受け取ったような気がするけれど、それでもお金持ちになってその気持ちを味わってみたいと思ってしまいますけどね。
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