2018年 ドイツ
クリスティアンは、ろくでもない連中とつるんで刑務所送りになった。出所した彼は、そんな過去と決別するために大型スーパーマーケットで働くことにした。配属先の飲料部門で仕事を教えてくれることになったのはブルーノという年配の男だった。その店は、かつて東ドイツのトラック輸送人民会社だったが、再統一後に企業買収されて商業施設に様変わりしたという経緯があった。ブルーノやそこで働く年配の社員の多くは、かつてはその人民公社の長距離トラックの運転手だった。
クリスティアンは慣れない仕事に戸惑うが、楽しみもあった。職場の同僚のマリオンに一目惚れしたのだ。問題は彼女が人妻ということだった。
ブルーノの手解きでフォークリフトの運転を練習するが、なかなか上達しなかった。それでもブルーノは見捨てることなく指導してくれた。やがて、練習の甲斐あってフォークリフトの免許試験に合格した。ブルーノだけでなく皆んなが祝ってくれた。
クリスマスがやってきた。閉店後の同僚とのささやかなパーティーの場で、初めてマリオンとゆっくりと言葉を交わすことができた。クリスティアンの胸は高鳴った。
1月に入り、万事順調だったクリスティアンの耳によくない知らせが入ってきた。マリオンが夫の暴力に悩み仕事を休んでいるというのだ。このままマリオンが退職してしまい、二度と会えなくなるかもしれないと思うと、仕事も手につかなくなった。
そんなある日の夜、仕事帰りにブルーノが自宅へ招待してくれた。ブルーノは妻と一緒に暮らしていると話していたが、なぜか室内は散らかり荒んでいた。酒を飲みながら、クリスティアンはブルーノからマリオンがまもなく復職することを明かされた。そして、彼女を支えてやってくれと頼まれた。
日本で言えばコストコの倉庫店のような大型販売店が舞台です。「合理主義」を追求した飾り気がない殺風景な店内で働いているのは、ロボットのように働かされるなど御免だと言わんばかりに、賞味期限切れの商品を頬張り、仕事中にチェスを興じるマイペースな人々です。この辺の大らかさは旧東ドイツ時代の名残りなのでしょうか。
過去の過ちを反省し真っ当な人生を歩み始めようとするクリスティアン、そして若者の更生を静かに支えるブルーノの2人の姿が心に沁みます。
主人公のクリスティアンよりも、ブルーノが妙に心に残る作品です。少し地味ながら異国の日常風景を感じられる良作です。
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