ふーんなラスト

貧困が詰め込まれた街 [シティ・オブ・ゴッド]

2002年 ブラジル

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あらすじ

 1960年代。ブラジルの首都リオのスラム街「神の街」には、政府の方針で各地からホームレスが次々と送り込まれていた。主人公のブスタペはそんな環境で育った。街ではカベレイラ、アリカーチ、マヘクの3人組が凶悪で有名だった。3人組はまだ幼いリトル・ダイスとベネという子分がいた。ベネはカベレイラの弟だった。

 3人組はリトル・ダイスとベネを軽く見ていた。後にその2人が頭角を現すとは想像すらしなかった。

 転機となったのは3人組がモーテルを強盗した事件だった。3人組は人を殺さない取り決めていたが、事件後のモーテルは死体の山になっていた。主犯格のカベレイラはそれを自分達を陥れるための警察の陰謀だと考えていたが事実は違った。見張り役をやらされ蚊帳の外に置かれていたリトル・ダイスが3人組の後に続いてモーテルに押し入り、彼の殺人願望を満たすために無差別に銃殺していったのだ。

 その結果3人組は散り散りになりカベレイラは警察に追われる身になった。彼はしばらく潜伏していたが、恋人と街を出ようとしている時に運悪く警察に見つかり射殺された。たまたまそのときブスタペは現場に居合わせた。しかし彼の脳裏に残ったのは彼の死では無く、彼の死体を撮影する新聞記者のカメラだった。その時以来、ブスタペはカメラマンになることを夢見るようになった。

 モーテル事件の後、行方知れずになっていたリトル・ダイスは街の外で金を稼いでいた。そして街に戻るとベネと共に荒稼ぎした。そして2人はより多くの富を得るため神の街のヤクの売買を牛耳ることにした。リトル・ゼに改名したリトル・ダイスはベネと共に街のヤクの元締めを次々と襲撃し殺害した。しかしベネの友人だったセヌーラだけは見逃してやった。その結果、街の一角のセヌーラのシマ以外は全部リトル・ゼのものになった。

 皮肉なことにリトル・ゼが牛耳ったお陰で神の街では犯罪がなくなった。警察に目をつけられないよう、リトル・ゼが街を荒らすことを禁じたからだった。

 金回りが良くなると社交的なベネは服を買いダンスホールで踊ることに夢中になった。皆に気前よく奢るので人気者になった。その一方でリトル・ゼはひたすら街の権力を独占することに固執していた。そんな彼についていけなくなったベネは恋人と新しい生活を築くために街を去ることにした。

 人気者のベネの送別会がダンスホールで盛大に開催された。そのとき一発の銃声が鳴り響いた。リトル・ゼを恨んでいた男が誤ってベネを撃ってしまったのだ。それがリトル・ゼとセヌーラとの抗争の引き金になった。劣勢のセヌーラはリトル・ゼに恨みを持つ元軍人のマネを味方に引き入れた。マネの正確な射撃の腕はセヌーラの力になった。その頃ブスカペは夢を叶えるために新聞社に入社し、下っ端仕事に汗を流していた。

 抗争は長引き1年経っても終わらなかった。ある日の銃撃戦でマネが負傷して病院に搬送された。マスコミのインタビューに応じた彼の顔写真が新聞の一面を飾った。リトル・ゼは自分よりマネが目立つことが許せなかった。カメラを使える手下がいなかったので、ブスカペを呼び出し写真を撮らせた。そのフィルムの現像を新聞社のラボに頼んだところ、勝手に新聞の一面に掲載されてしまった。ブスカペはリトル・ゼに殺されると恐れたが、当の本人は新聞に載って大喜びだった。誰一人として撮影に成功していなかったリトル・ゼの写真は新聞社でも評価された。ブスカペはさらに写真を撮ってくるよう機材を与えられた。

 カメラを持って街を歩いているとリトル・ゼとセヌーラの銃撃戦が始まった。双方とも新兵器を携えての激しい攻防だった。そして駆けつけた警官によって遂にリトル・ゼとセヌーラは逮捕された。激しい抗争の幕切れだった。その一部始終をカメラに収めたブスカペはパトカーを追って街を疾走した。そして街の一角でリトル・ゼが警官に金を渡して見逃してもらっている決定的瞬間をカメラに収めた。その直後期せずして驚くべき光景を目の当たりにした。丸腰のリトル・ゼが彼の兵隊として戦うために銃を与えられた少年達に蜂の巣にされたのだ。王が死に、また次の王が現れるまでのカオスの始まりの瞬間だった。

 ブスカペはリトル・ゼの最期をカメラに収めた。その写真は新聞の一面を飾った。ブスカペはウィルソン・ロドリゲスに改名しプロカメラマンとして活躍した。

感想

 本作は実話ベースです。あらすじで触れた以外にも多くの人物が登場します。全体で2時間の尺ですが、作りが丁寧なので途中で迷子になることなく最後まで鑑賞できます。

 Wikiによると舞台である”神の街”は、リオ市内に点在していた貧民街に住む人々を60年代に政策的に寄せ集めた場所とのことで、人工的に作られた貧民のための大貧民街とも言えるでしょう。人口38000人の”神の街”は現在でもスラム街のままのようです。

 街並みを見ると意外に整然としています。やはり自然発生的ではなく政策的に作られた街だからでしょう。商店街もありますが少し外れるとかなり荒廃した景色が広がっています。しかし、本当に危ない地域は他にあるのかも知れません。2011年には当時のアメリカ大統領のバラクオバマ氏が訪問したこともあるようです。理由はわかりませんが。

 さてストーリーはギャング(や任侠もの)によくあるパターンです。「血で血を洗う抗争」、「盛者必衰の理」、「因果応報」そんなワードで想像するとおりの内容です。「スカーフェイス」などと同じ系列です。

 ”神の街”の歴史の中ではリトル・ゼも繰り返される物語の一つに過ぎない、そんな思いを抱かせるラストシーンでした。本作は、ブスカペの第三者視点から語られていることもあり、リトル・ゼやベネの内面までは深く描かれてはいません。そういったこともあって、リトル・ゼ達の死もセンチメンタルな描写にはなっていません。私としてはその辺りも高評価です。さんざん人を殺めてきた人間の死を見て涙ぐませるような演出は健全ではないと思うからです。

 旅行先にはあまり向いていない危険地帯”神の街”を感じることができる本作(ただし40年位前ですが)。おすすめです。

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Basco