2016年 ドイツ
ナイジェリアから難民としてドイツにやってきたディアロは、収容施設で難民申請の結果を待っていた。
一方、外科医のリヒャルト・ハートマンと元教師のアンゲリカは、長年連れ添った夫婦だったが、生涯現役を貫こうとするリヒャルトと既に定年退職したアンゲリカとの人生観のズレから、いつしかギクシャクした関係になっていた。
アンゲリカは、弁護士をしている息子のフィリップと、31歳でまだ大学生の娘のゾフィを家に呼び寄せると、一家が揃った晩餐の席で難民を1人受け入れようと思っていると打ち明けた。寝耳に水のリヒャルトはフィリップとともに猛烈に抗議するが、アンゲリカが既に予約を入れていたので、リヒャルトは渋々ながら妻と一緒に収容施設まで行くことに同意した。
何組もの希望者と面接した結果、アンゲリカとリヒャルトはディアロをハートマン家に迎えることにした。
ディアロは辛い思い出でもあるのか故郷での出来事を話したがらなかったが、素直な性格で良く手伝いをするため、すぐにアンゲリカとゾフィの女性陣に気に入られた。
裕福で不自由がないように見えるハートマン家だったが、リヒャルトは生涯現役であることに執着しすぎて周囲と溝が出来ていたし、アンゲリカはこれからの生き方を定められず悩んでいたし、フィリップはワーカホリックで精神を病んでいたし、ゾフィは人生のモラトリアムから抜け出せないとそれぞれが問題を抱えていた。しかしディアロの自然体の人生観に触発され徐々に考え方が変わっていった。肩の力を抜いて、気持ちに素直に生きればもっと幸せを感じることができる、そう思えるようになったのだ。
ディアロを新たな家族として迎え入れたハートマン家だったが、彼の難民申請が却下されるという予想外の出来事が発生してしまった。異議申立ての審理はわずか2日後、それが却下されればナイジェリアに送還されてしまう。さてハートマン家はディアロの送還を阻止することができるのか!
ジャンルとしてはコメディとなっていますが、ドイツにおける難民受け入れ、現代ドイツ社会の複雑な倫理観そして誰もが直面するミッドライフクライシスといった様々な問題を絡め合わせた中々の力作です。
難民受入派も決して人道主義者というわけでなく、体面を保つためにそうしているというドイツ人の本音もうまく匂わせています。ヨーロッパの国の人々のアフリカの人たちを見る目が悪気はないんでしょうが、上から目線がデフォルトというところが気になりますが……。
また、リヒャルトは現役にこだわって必死にもがくのですが、それがいわゆる「老害」になることも嫌味なく描かれています。
ディアロは決して天使のような存在ではなく、ただ自分なりにマイペースに日々を過ごしているだけのごく普通の若者です。ハートマン家の人々はそんなディアロと接することで自分達のライフスタイルがいかにオーバーペースであったのかを思い知らされ、自分らしさを取り戻す、その様子が穏やかな視線で描かれる、そんな良作です。
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