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ダメぜったい!  [トレインスポッティング]

1996年 イギリス

コンテンツ

あらすじ

 スコットランド。レントンは「修道院」と呼んでいる廃墟でイカレタ仲間とヘロインで一緒にハイになって過ごす日々を過ごしていた。平凡で質素な生活など退屈の極みで、そんな生き方をするくらいならヘロインで溺れ死ぬ方が本望だった。最高のセックスよりもヘロインの方がいいし、どんな問題もヘロインをやれば他人事になった。

 そんなレントンだったが、ある日突然クスリを絶とうと決意した。「修道院」を出て家に戻り、失業給付をもらうために就職活動してみた。ヘロインを止めたら人並みに性欲も出てきたから、ディスコでナンパしたりもした。

 しかし、まともな生活への復帰に挫折したレントンは「健全な選択」としてヘロイン生活を再開した。ヘロインを止めてからたった12時間後のことだった。

 それからのレントンは仲間とともにクスリを手に入れるためなら何でもやった。処方箋の偽造、クスリの窃盗……。もはやヘロインでなくても薬物なら何でもよかった。クスリを買うために万引きなんかも繰り返した。そして悪運尽きてレントンたちは逮捕された。

 裁判で実刑となった仲間もいたが、レントンはリハビリを条件に執行猶予がついて家に帰ることができた。しかし自分だけが刑務所に入らずに済んだことに罪悪感を感じて、結局またヘロインをやって病院送りになった。両親に連れられて帰ってきたレントンは、クスリを抜くために自分の部屋に閉じ込められた。激しい禁断症状に襲われ、レントンは独りもがき苦しんだ。何とか克服したが、その後も憂鬱と退屈、自殺したいほどの自己嫌悪と戦わなければならなかった。

 クスリから足を洗ったレントンは故郷のスコットランドを離れ、ロンドンで不動産の会社に就職した。それなりに充実した生活を送っていたが、そのうち地元の仲間が転がり込んできた。そしてまとまった量のクスリを売りさばく計画に加担させられた。その結末は……

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計画はうまく行った。大金を手に入れた仲間たちは大はしゃぎで祝杯をあげたが、その中にあってレントンだけは冷めていた。今こそ彼らとの腐れ縁を断ち切るときだと決意したレントンは、翌朝、仲間たちがホテルの一室で雑魚寝している最中に大金が入ったバッグを手にとり、一人こっそりとホテルを抜け出すのだった。

感想

 大ヒットした作品です。「退屈な大人になりたくないっていう」のは、万国共通で若者が取り憑かれる麻疹のようなものですが、そのはけ口が往々にして薬物依存になるというのはスコットランドという国が抱える慢性的問題のようです。2019年の統計で、スコットランドの薬物関係の死亡率は英国全体の3.5倍を超えており、その多くはこの作品が公開されたときに10代、20代だった人たち。専門家によれば、その原因が「貧困」にあって「薬物で金を使い果たして困窮するのではなく、元々金がない」とのこと(CNNの記事より)。

 確かにこの作品でもレントンは厭世感に支配されていると感じた。若者が将来を展望できない環境というのはとても不幸ですね。私としては日本の最近の若者もそういう状態に陥りつつあることを懸念しています。

 あらすじでは触れなかったけれど、健康的な生活を送っていたのにちょっとしたきっかけで薬物に溺れ最後はHIVでのたれ死んでしまう友人も出てきたりと、本当に薬物はヤバいなと思いましたね。

 レントンがクスリの禁断症状に襲われるシーンは、キレイに描写し過ぎかなと思う一方で、クスリをキメて床が沈み込んでいく感覚に襲われるところは妙にリアリティがありました。あ、私はクスリをやったことはありませんので、あくまでも想像ですよ。

 原作の小説は読んでないので、元々の基調が分かりませんが、本作はキービジュアルを含め薬物中毒の若者をややスタイリッシュに描きすぎている感があり、ある意味罪深い作品となっています。とはいえ、リアルに描きすぎて誰も観てくれないのではしょうがありませんから、仕方なしか。

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Basco