実話と言われなければ絶対に信じられない [運命を分けたザイル]

2003年 イギリス

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あらすじ

 実話ベース。

 1985年、英国人のジョー・シンプソンとサイモン・イェーツは、誰も登頂したことがない悪名高きシウラ・グランデの西壁を登るためにペルーへ向かった。そして悪天候に苦しみながらも3日間かけて登頂に成功した。「遭難の80%は下山時に起こる」、2人ともそのことを十分承知していたはずだが、ほんの些細なミスでジョーは滑落してしまい、左脚を骨折してしまった。

 ジョー負傷後も、彼はサイモンにかばわれながら下山を続けるが、運悪く2度めの滑落で絶壁で宙吊りになってしまった。

 サイモンは状況がわからないまま、崖淵の向こうにいるはずのジョーからの合図を待っていたが、いよいよ自分の命まで危うくなりやむを得ずザイルを切った。文字どおりの命綱が断たれたジョーは巨大なクレバスの中に吸い込まれていった。

 やがてジョーはクレバスの中で意識を取り戻した。運良く途中の出っ張りに引っかかり一命を留めたのだ。墜落した高さは目測で45メートル。その高さの氷壁を登ってクレパスを脱出することは不可能だった。彼は一度は死を覚悟したが気を取り直し、骨折した左脚をかばいながら切り離されたザイルを使って、どこまで続くかわからないクレバスの底へと下った。

 そうしてなんとかクレバスの底だと思しき場所にたどり着いた。15メートルほど上の方に日差しが見えた。なんとかそこまで登ろうとしたそのとき、ジョーは自分が立っているのがクレパスの底ではなくさらに深く続く空洞の上に張った薄い氷の上であることに気づきゾッとした。彼は慎重に事を進め奇跡的に割れ目から山腹への脱出に成功した。しかし左脚を骨折した彼にとって、そこからが本当の地獄だった。歩くことがままならないため、そこから何日間も雪の上を食料も水もないまま這って進むしかなかったのだ。進むべき方向を示す手がかりは先に下山したサイモンの足跡だけだった。しかしそれも吹雪によってかき消されてしまった。

 無数のクレパスが口を開けている迷路や、氷河をなんとか通り抜けると、巨大な岩が立ち塞がっていた。這うことができないので、片足でケンケンして進もうとするが跳ぶたびに転んだ。喉の渇きは限界を超え、水はないのに、ずっと耳の中では水の音がしていた。

 睡魔に襲われながらもジョーは進んだ。もはや生存願望はなかった。ただ独りで死にたくなかった。自分の体がゆっくりと確実に衰弱するのを感じながらも、前進し続け、ついにベースキャンプ付近まで到達した。そうなると、今度はもう誰もいないのではという不安に急に襲われた。

クリックするとラストが表示されます(ネタバレ注意!)
錯乱状態になったジョーは叫んだ。その叫び声がかすかにベースキャンプのサイモンたちの耳に届いた。初めは幻聴かと思ったサイモンたちだったが、声のする方に行くと、キャンプから200メートルほど離れた場所に、幽霊のような姿で横たわるジョーを発見したのだ。ザイルが切られてから3日後のことだった。
ジョーは2年間で6回の手術を乗り越え、再び登山に挑んでいる。サイモンはザイル切ったことを山岳界から避難されたが、それを擁護したのはジョーだった。

感想

 ディスカバリーチャンネル等でやっている再現ドキュメンタリーのような作りです。冒頭、ジョーとサイモン本人へのインタビューから始まりますので、2人とも無事だったことを承知の上で鑑賞することになります。実話だから結果を隠しても仕方ないという制作側の判断なのかも知れませんが、この映画のビューワーのほとんどはこのエピソードを知らないので、あえて結果を伏せてハラハラドキドキを味わってもらうという構成でも良かったかも知れませんね。

 タネ明かしされていても、山岳フィクションと見紛うほどの奇跡的な出来事であったことは間違いありません。なんと言っても、実際「バーティカルリミット」はこの話のエッセンスを拝借しているとのことなので。バーティカルリミットが良かったなーとか、山岳ものが好きなんだよなーという方に特におすすめです。

Basco

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