2013年 デンマーク
特捜部Qの手柄でカールの上司の課長が表彰された。お祝いムードをよそにカールはただ仕事に没頭していた。チームに新しい秘書としてローセという名の女性が配属されたが、それすらもカールにはどうでもいいことのように思えた。
帰路につくカールは、待ち伏せていた見知らぬ老年の男から事件の再捜査を依頼されたが、カールは相手にせず立ち去った。その後すぐに、その老年の男は死体で発見された。自殺だった。
老人の名はヤーアンスンといい、かつて市警の警部だったが、息子と娘を殺害された後、退職していた。負い目を感じていたカールは老人の遺志どおり、彼が収集した捜査資料を引き取った。
被害者は双子の兄と妹で、妹はレイプされた後に殺害されていた。事件は無職で怠け者のビャーネ・トゥーヤスンという男の自首で解決していた。カールはビャーネについた弁護士が、富裕層専門のベント・クルムだったことが引っかかった。ビャーネはその唯一の例外だった。
カールはアサドと共に仮出所したビャーネの元を訪ねるが、予想どおり彼が事件について口を開くことはなかった。しかし、彼と会ったカールは、ヤク中だったビャーネが単独で2人を殺害することができるはずがないと疑いを深めた。
ローセの調べによれば、ヤーアンスンは子供達が殺害された事件の後、類似の事件を調べていくうちに日曜日や満月に同じような事件が多発していたことを突き止めていた。また、事件当日にキアステンという名の女性が警察に事件を通報していた事実も新たに判明した。
キアステンの継母の元へ聞き込みに行くが、彼女は実子ではないキアステンになんの関心もなかった。キアステンの実父の死後、寄宿学校に入学させ、その後はほとんど接点がなかったようだった。
ローセの調べで、寄宿学校でキアステンがディトリウという男子生徒とよく一緒にいたことが分かった。ディトリウは著名な実業家になっていた。カールが彼の邸宅を訪ね事情を聴くと、彼はキアステンと何度かデートしたことはあったが性格が極端すぎてついていけずに別れたこと、ビャーネとは何度か大麻を一緒にやった程度の付き合いだったことを、あっさりと認めた。カールはディトリウが事件の真犯人ではないかと疑いを深めた。
キアステンの行方を追うカールは、数週間前に中央駅で見かけたという目撃証言を得た。そして、カール達と同じく彼女の行方を追っている男の存在も知った。間もなくカールはキアステンを発見するが、身の危険を感じた彼女は彼を鉄パイプで殴り逃亡してしまった。彼女が寝起きしていたらしい貨物車両を捜索していたところ、ミイラ化した赤ん坊が入ったバッグが見つかった。
キアステンに殴られたカールは気を失ってしまった。病床で目を覚ますと、アサドからヤーアンスンの子供たちが殺害された事件の4日後に、レイプ被害を訴えた血だらけのキアステンが病院に来たが、死亡した胎児の処置の準備中に姿を消した事実が判明したと報告があった。
まだ完全に回復していないカールに、男性の転落事件があったという知らせが入った。現場にあった死体はキアステンを追っていた男だった。目撃情報によると男はキアステンに突き落とされたらしい。そして、そのキアステンはディトリウの邸宅に向かっているとの通報が入った。
ディトリウ邸に急行したカール達は、遂にその付近にいたキアステンの身柄を確保した。カールは殺人犯として裁判を待つ身のキアステンにディトリウが真犯人であることを認めさせると、ディトリウ逮捕に協力を求めた。キアステンは、ディトリウと行動を共にしていたウルレクという男には収集癖があって犯行の記念品を隠し持っているはずだと打ち明けた。
裁判まで時間が残されていないカールは、アサドを連れてウルレク邸に侵入することにした。もちろん違法捜査だ。首尾よく証拠品を探し出したカール達だったが、ウルレクに麻酔銃を撃たれ捕まってしまった。気がつくと、そこはどこか分からない倉庫の床の上だった。屈強な男が現れると、カールは無理やり強い酒を口の中に注ぎ込まれた。泥酔して運転を誤りアサドと共に事故死したという筋書きが用意されていた。カールは、アサドは無事脱出し、真実を暴くことができるのか。物語は意外なラストを迎える。
前作と同様、本作も現在と過去が交互に3人称視点で描かれます。今回のあらすじは、敢えて視点をカールに定めてまとめてみました。かなり再構成しているので、果たしてこの作品の面白さがどこまで伝わるのか甚だ疑問ですが、さりとて作品の筋書きに忠実に書いても、多分分かりやすくはならないので、「?」の場合は実際に鑑賞していただくということでご容赦願います。
筋書きとしては、ややご都合主義的なところもあるものの、一言で言えば「女の純愛」がテーマとなっています。いくら不良ぶっていても、若者は純粋さを捨て去ることはできないものなのだと、特に不良でもないのに純粋さを失ってしまった熟年の私などは感慨深く思いました。それにしても、どこまでいっても救いのない話で暗い気持ちになりました。
このシリーズは、長編ミステリー小説をデフォルメせずにそのまま映画に詰め込んだ感じで、気軽に楽しめるかは「?」ですが、複雑に入り組んだ重厚なストーリーが好きな方にはおすすめです。
ただ、ハードボイルドタッチの本作、主人公が意外と間抜けでしっかりしたアシスタントに助けられがちです。話を盛り上げるために主人公がピンチに襲われるシーンも必要なのでしょうが、殴られたり囚われすぎで少し滑稽に思えてしまうのは私だけでしょうか(前作もそうでした)。
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