2006年 アメリカ
PJの父親カールは交通事故で女性を死なせてしまった。そのときPJも同乗していた。父親は逮捕された。面会に行ったPJは離婚した母に保釈金を出してもらおうと提案するが、父親は乗り気でなかった。家族は離散していた。カールの元に残っていたのはPJだけだった。
PJは車の修理代を借りるために母親の家に行った。母親はランドルという男と同居し、新しい家庭を築こうとしていた。警察官のランドルにPJは密かに憧れていた。
父親が逮捕されて生活が立ち行かなくなった。10日後に立ち退くよう命令が出ていると父親に報告すると、製鉄所で働いている兄のベンに仕事を都合してもらえと言われた。帰宅すると水道が止められていた。
徐々に追い詰められていたPJはアルバイト先のレストランでマネジャーについ口答えしてクビになってしまった。事態は悪化する一方だった。
翌日荷物をトラックに積み込み、製鉄所までベンを訪ねた。ベンは結婚し子供もいた。水道と電気が止められたから困っていると助けを求めると、高価な父親の工具を持ち出さなかったことを詰られた。
仕方なく家に戻るとカールの兄のヴィックがいた。ヴィックは独身でひとり暮らしだった。PJは彼の家で世話になることにし、紹介してもらった解体工事の仕事を始めた。
それなりに新しい生活が始まった。PJはランドルのパトロールに同行させてもらうようになった。レストランのバイトはクビになったが、そこで付き合っていた彼女とはデートを続けていた。
翌日、面会に行ったPJは父親に自首すると言い出した。事故のとき運転していたのはカールではなくPJだったのだ。カールは「そんな必要はない。こんなところに入ったらお前の人生はおしまいだ」と思いとどまらせようとした。カールは10年前に自分勝手に家を去り家族を離散させたことを悔いていた。カールにとってPJの身代わりになるのは罪滅ぼしだったのだ。
PJは「正しい道を選んだということを忘れるな。オレに任せて忘れるんだ」とカールに言い含められて帰路に着いた。
間もなくヴィックが保釈金を支払い、カールは釈放された。懲役刑になることは確実だったから、判決日までの束の間の自由だった。彼は釈放されたその足で自分が捨てた元妻と息子のところへ行き謝罪した。許してもらえるとは思っていなかったが、それだけが心残りだったのだ。
そして判決の日。カールは家族を捨てた日のことを思い出しつつ、実刑判決を下され刑務所に収監された。
しばらく後。PJは刑務所まで父親の面会に訪れ、来週警察学校を卒業すると報告した。卒業後は遠方での勤務になると聞いたカールは、電話は途中で切られるから、手紙を書いてほしいとPJに頼むのだった。
ある種リアリティが感じられるアメリカの生活風景。ハリウッド映画のような原色の世界ではなく、空虚で白々しい景色が描かれた作品です。そして、その中で大して輝いてもいない青春時代を過ごすPJの日常が淡々と描かれます。
実際に人を死に至らしめてしまった事故を起こしたPJに、さほど罪悪感がないところが気になりました。だけど、これまで自分たちを苦しめた父親が自分の身代わりになるくらい当然のことと、どこかで思っていたのかも知れませんね。物事に対する気持ちなんてどうとでも変わるものですから。そうでなければ、単純に罪悪感を持ち合わせていない危ないやつということでしょう。
現在進行形の場面では色彩を抑えた映像としている一方で、カールが家を出ていく回想シーンは鮮やかな色彩の映像としているあたり、普通のセオリーとは逆で紛らわしいのですが、好意的に解釈すれば、一家にとって決定的で忘れがたい場面であるということを表現するために意図したものなのかも知れません。
Wikiのページも寒々しく本国でもほとんど関心が持たれていない作品のようですが、なぜかDVDになっている不思議な作品です。
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