40年ぶりのナポリ、40年ぶりの再会 [マカロニ]

1985年 イタリア

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あらすじ

 アメリカの航空会社の副社長であるトラベンは、会議のためにナポリの地に降り立った。彼にとってナポリは40年ぶりだった。あまりにも昔のことで当時のことはほとんど記憶になかった。

 トラベンの滞在するホテルに、アントニオという男が尋ねてきた。アントニオによれば、40年前にトラベンは彼の妹のマリアと付き合っていたらしかったが、彼から見せられた当時の写真を見ても全く思い出せなかった。アントニオを不審者だと思ったトラベンは、頼みごとがあるならさっさと言ってくれと冷たく突き放した。その言葉を聞いたアントニオは顔色を変えて彼を罵ると写真を忘れて立ち去ってしまった。さすがに言いすぎたと思ったトラベンは、写真を返すために彼の家を訪ねることにした。あいにく彼は仕事に行っていて不在にしていたが、応対してくれたアントニオの妻、近所の人たちが例外なく自分のことを知っていて、しかもとても尊敬の眼差しを向けられたことがすごく不思議だった。

 ようやくアントニオを彼の勤務先で捕まえたトラベンは、その理由を尋ねた。アントニオが言葉を濁し、これから(かつてトラベンが付き合っていた)マリアの家に行くからとはぐらかそうとしたので、トラベンはマリアの家まで一緒に行くと言い張った。観念したアントニオがようやく白状した。実は、トラベンが帰国して傷心した妹を慰めるために、アントニオがトラベンのふりをして手紙を書いていたのだ。問題なのは手紙の内容で、絶滅しそうな人種を助けるためにアマゾンに向かったとか、洪水で流されそうな人々を救出したといった突拍子もない武勇伝の数々だった。アントニオの周囲の人々がトラベンに尊敬の眼差しを向けていたのは、それを事実だと信じこんで彼を英雄視していたからだったのだ。最初のうちは平凡な内容にするつもりだったのに、段々とエスカレートしてしまったと申し訳なさそうにするアントニオに呆れながらも、トラベンは正直悪い気はしなかった。

 翌日、トラベンは預かった手紙を返しにアントニオを訪ねた。そのまま成り行きで彼の息子がバンドが練習しているスタジオや彼の母親の家に連れていってもらった。息子たちは音楽関係者から認められてもうすぐデビューする予定だとアントニオは得意げだった。アントニオの母親からは、彼がこれまで2度死んだことがあったという不思議な話を聞いた。後でトラベンがアントニオにそのことを尋ねると、いずれも葬式の用意をした後、彼が午後1時に「復活」したというのだ。

 トラベンがホテルに戻ると、アメリカの秘書から彼の不在中に緊急の重役会議が開かれ、次期社長を決めることになったとの知らせが入った。地位を守るため、トラベンは急遽帰国しなければならなかった。

 帰国の朝、見送りに来ると言っていたアントニオが空港に現れなかった。実はその頃、アントニオの息子がレコーディング費用に充てるための金をマフィアから盗んでいたことがバレて、アントニオはマフィアに返す金をかき集めるため奔走していたのだ。

 そのことを知ったトラベンは帰国を取りやめナポリの街に戻り、アントニオの跡を追った。そしてアントニオがマフィアに撃たれそうになっているところへ駆けつけた。もみ合いになったが、最後はトラベンが全額金を用意することでことなきを得た。

 一件落着かと思ったが、もみ合いになったときにアントニオは頭部を銃で殴られ出血していた。彼は裂傷を負っただけだと言っていたが、トラベンが少し目を離した間に息を引き取ってしまった。

 アントニオの葬式の日。時刻はまもなく午後1時。家族や親戚そしてトラベンがアントニオの棺を前に別れの食事の準備をしていた。三度目の奇跡を願い、アントニオの指には鈴に繋げられた紐が結えられていた。

クリックするとラストが表示されます(ネタバレ注意!)
ナポリの街並みが映される中、鈴の音が響き渡った。

 トラベンは、アントニオの母親から、アントニオはこれまで2度死んだことがあったという話を聞きます。トラベンがアントニオにそのことを尋ねると、2度とも葬式の用意をした後、午後1時に「復活」したというのです。

 そんな中、アメリカの秘書からトラベンの元へ、トラベンの不在中に緊急の重役会議が開かれ、次期社長を決めることになったとの知らせが入ります。地位を守るため、トラベンは急遽帰国することにします。

 帰国の朝、見送りに来ると言っていたアントニオが空港に現れません。アントニオの息子がマフィアから金を盗んでいたことがバレて、アントニオは返す金をかき集めるため奔走していたのです。

 帰国を取りやめ、アントニオを救うためにナポリの街に戻ったトラベンは、間一髪で救い出しますが、もみ合いになったときにアントニオはチンピラに銃で頭を殴られてしまいます。

 アントニオは頭部に裂傷を負っただけだと言っていましたが、トラベンが少し目を離した間に息を引き取ってしまいます。

 アントニオの葬式の日。時刻はまもなく午後1時。家族や親戚、そしてトラベンが見守る中、3度の奇跡は起こるのでしょうか。

感想

 マルチェロ・マストロヤンニ、ジャック・レモンという名優2人が共演した作品。私はマストロヤンニが特に好きだし、この作品の彼の演技もすごく(私が思う)彼らしくてよかった。

 アントニオは、家族を何よりも大切にする優しい夫であり父親という(当時の)ティピカルなイタリア人男性像として、一方のトラベンは少し鼻につく高慢さと調子の良さがこれまたイタリア人から見たティピカルなアメリカ人像として描かれています。まあ、私が「そうそう」と感じただけで、実際のところは分かりませんが。でも、この作品はその国民性の違いに面白さがあるので、あながち間違っていないのではと思います。世界が狭くなって、お国柄がぼやけてきた現代ではなかなか作れない作品ですね。日本国内を旅行してもロードサイドに並ぶ看板は何処も似たり寄ったりであるように、国が変わってもアップルやサムスンといった国際的企業のマークをあちこちで見かけるし、近代建築なんかも同じような建物で街並みもどんどん個性が失われている時代ですから。

 正統派のイタリア映画って感じですので、お好きな方は是非!と言ってもDVDもなさそうだし、配信もされていないようなので、なかなか観ることができないのが残念です。後世まで残る作品って出来の良し悪しだけじゃなくて、版権などの運要素もあるので残念です。

 あらすじを読んでいただき、下の動画(3分ダイジェスト)を観ていただくと、その雰囲気は味わえると思います(少し時系列順になっていないシーンもありますが)。

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Basco