2013年 アメリカ
ウォルターはグラフ雑誌「LIFE」のベテラン写真整理係だ。彼は同じ社にいるシェリルに密かに恋心を抱いていたが、時折言葉を交わすことが精一杯で告白する勇気などなかった。彼の生活は会社と家とを往復するだけの孤独で地味なものだった。
そんなウォルターの人生に大きな転機が訪れた。ネットの普及とともに発行部数が低迷していたLIFE誌が、新しい経営陣によって廃刊され、ウォルター達編集部員はリストラされることになったのだ。落ち込む彼のところへ、ベテランカメラマンのショーンから贈り物が届いた。その中にはLIFE誌廃刊を悔やむメッセージとともにネガと財布が入っていた。ショーンによれば、そのネガの25番目のコマがLIFE誌の最終号の表紙を飾る写真だと言うのだが、その肝心な一コマが欠けていた。ウォルターは新しく赴任してきた上司から、そのネガを提出するよう命じられた。しかし、どこを探してもなぜかその一コマだけが無かった。これまで写真の整理一筋でやってきたウォルターが紛失したはずがなかったが、もし見つからなければ自分の責任にされることは間違いなかった。
ショーンに尋ねようにも、彼は撮影のために世界を飛び回っていて電話も持っていないので尋ねようがない。仕方なく手がかりを求めてネガの他のコマを焼いてみたが、彼の居所を知るための手がかりになるような写真はなかった。シェリルに密かに打ち明けると、彼女が経理の同僚にショーンが指定したギャラの支払先を聞いてあげると請け合ってくれた。うまくいけば、ショーンの足取りが追えるはずだと。
まもなくシェリルからショーンはグリーンランドにいるらしいとの情報が寄せられた。シェリルにグリーンランドに行ってみるしか手はないとそそのかされたウォルターは、彼女の言葉に背中を押されるように通勤カバンを手に職場を出ると、そのままグリーンランド行きの飛行機に飛び乗った。翌日、グリーンランドの地に降り立った彼は、彼が編集部からの郵便の受取先に指定していたバーに向かった。そこが彼の大冒険の出発点だった。ネガのありかを尋ねるためだけにショーンの足跡を追い、アイスランド、アフガニスタン、そして遂にはヒマラヤ登山まで決行した。それまでの彼の内向的な生活からは考えられない大冒険だった。そしてようやくショーンに会うことができたウォルターだったが、ネガのありかは意外な場所にあった。
ネガはどこにあったのか。そして、LIFE誌の最終号の表紙を飾るにふさわしいとショーンが送った写真とは。
ベン・スティラー監督主演作品です。彼はズーランダー、ナイトミュージアムなどの作品に出演しているようですが、私の嗜好とは方向性が少し違うようで、彼の作品を観るのはこれが最初です。
若かった頃、まだ遠い国だったアメリカの様々なシーンを見ることができるLIFE誌は、大きな書店の輸入雑誌コーナーに置かれていたお洒落な存在でした(なお日本にも「アサヒグラフ」等のグラフ誌がありましたが、報道写真の延長みたいな感じで子供の頃の私の心をときめかせることはありませんでした)。過去の栄光だけでは存続できないのは宿命だと分かっていても、一時代を築いた雑誌が無くなってしまうのは寂しいものです。銀塩写真など、カセットテープやフロッピーディスクと同じくらい最近の若い人には全く縁がないでしょうから、そもそもネガとは?という説明が必要な時代なのかもしれませんね。話自体は、自分の殻を突き破る中年男をユーモラスに描いたもので、地味になりがちな内容です。しかし、そこはLIFE誌というブランドを利用して彩りを添えている辺りがうまいと思います。ただそれゆえに世代を選ぶのかも知れません。LIFE誌を知らない、中年の危機もまだ知らない若い世代の観客には、どれだけこの作品を楽しめるのかは不明です。
あらすじはかなり端折ってしまいましたが、いろいろな要素をうまく組み合わせた丁寧な話作りで私は楽しめました。LIFE誌を知っている世代ならば間違いなく楽しめるエンターテイメント作品です。
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