2016年 アメリカ
1961年。アメリカでは当たり前のように黒人差別が行われていた。
NASAには計算室という部署があった。そこでは計算が得意な黒人女性が集められ、各部署からの要請に対して計算係として派遣されていた。キャサリン、メアリ、ドロシーもそこで働いてた。
当時ソ連との宇宙開発競争で遅れを取っていた米国ではNASAに対して議会から厳しい目が向けられていた。
目下のNASAの目標は周回軌道飛行計画(マーキュリー計画)の成功だった。そのために何度も無人テストをしていたが失敗続きだった。計画を担当するスペース・タスク・グループに検算のために臨時で派遣されたキャサリンは、最初のうちは黒人女性ということで虐げられていたが、類稀なる数学の才能を見出され責任者のハリソンから重用されるようになった。そしてついに機密扱いのペンタゴンとのブリーフィングにも参席を認められ、宇宙飛行士のグレンの信頼の信頼をも得るようとなった。
メアリはNASAのエンジニアに志願しようとしたが、そのためには白人しか入学を認めていない大学の講座を受講しなければならなかった。負けん気が強い彼女は裁判所から入学許可の決定を勝ち取り、必要な講座を受講するチャンスをモノにした。
計算室の取りまとめ役だったドロシーは、NASAで導入準備が進められていたIBMのメインフレームが、やがて計算室の女性達の仕事を奪うことを予見し、職場の女性達にプログラミングを勉強させた。
いよいよマーキューリー計画の実行の日が近づいてきた。計算室の職員のプログラミング技術のおかげでIBMのメインフレームが戦力として活用されるようになった。しかし皮肉にもそのためにキャサリンの席が奪われてしまった。
計画実行の直前、IBMの弾き出したカプセルの着水ポイントの計算値がおかしいことにハリソンは気付いた。パイロットのグレンはハリソンに信頼できるキャサリンに再計算を任せて欲しいと要請した。
計算室のテレビで中継を観ていたキャサリンのところへ管制室から再計算するよう指令が入った。キャサリンの必死の計算で正しい着水ポイントの座標が導かれた。その計算値に基づきグレンを載せたロケットは発射された。そして周回軌道飛行を終えたグレンはキャサリンが計算した座標と寸分違わぬ場所に無事着水したのだった。
実話に基づく話です。
冒頭、幼少期のキャサリンが類稀な数学の才能を見出され、飛び級で高校へ進学するシーンから始まります。才能ある子供が環境に恵まれないばかりに不遇の人生を送るという悲しい作品もありますが、そんな心配は一切無用。黒人かつ女性という二重の差別があった社会で、実力で地位を勝ち取った3人の女性の話です。
実際にはいろいろな苦労があったはずですが、この作品ではうまくいった部分だけを抽出してストーリーを繋げていますのでジメジメした感じは全くありませんでした。必要以上に人種問題を強調しないあたりのバランス感覚に感心しました。あたかも一緒に食事でもしながら、彼女たちの思い出話を聞いているような感じでした。
ケチをつけるとすれば、ポスター(ジャケット)デザインが少し作品の雰囲気とミスマッチのような気がします。
本作は、喜びと達成感に満たされ、鑑賞後に多幸感に包まれること請け合いですので、何か失敗をして落ち込んだときなどに観るのもお勧めです。もちろん単純に気の合う人たちと一緒に観るのもいいでしょう。
ところで宇宙開発競争モノといえば、ソ連がアメリカよりも先に月面着陸に成功したというパラレルワールド的ドラマをAppleTV(For All Mankind)でやっていますが、こちらもお勧めです。
それにしても、冷戦がなければ人類はいまだ月に行っていなかったかも知れないとふと思いました。「必要は発明の母」等と言いますが、その”母”が戦争だったりすると複雑な気持ちになりますね。
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