フランス人は洒落た人生を送っている?パルドン? [ティエリー・トグルドーの憂鬱]

2015年 フランス

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あらすじ

 長年勤めた工場をリストラされたティエリー・トグルドーは、何もかもが嫌になっていた。職業訓練センターの勧めでクレーンの免許を取ったが再就職の役に立たなかった。9ヶ月後には失業手当が減額される。採用面接の練習をしたがことごとく不採用になった。筋ジストロフィーの息子の教育資金もまだ足りなかった。銀行からはアパートの売却を勧められたが、永年ローンを支払ってきた家を手放す気にはなれなかった。生活費を工面するために海辺のトレーラーハウスを売却しようとしたが足元を見られて値切られた。それでも妻子を養うために投げやりになるわけにはいかなかった。

 なんとかスーパーの監視員の仕事にありついた。生活に困って万引きした客を警察に引き渡すのは気が進まなかったが、仕事だから仕方なかった。

 まとめ役のような存在のレジ係の女性店員が、割引クーポンを捨てずに着服していたという不正が発覚した。必死の弁解も虚しく彼女は解雇された。働いてもなお生活に困窮していたがための不正だった。も生活に困って万引きする客や不正をする店員を非難する気になれなかった。少しでも魔がさせば、自分だって彼らと同じ側になるような気がしてならなかったからだ。

 緊急ミーティングが開かれた。解雇されたあの女性が店内で自殺したのだ。本社からやってきた人事部長は、職場で自殺したのは事実だがその原因が職場での問題とは限らない、他のことで悩んでいたのかもしれない、皆に責任はないと説明した。

 自分だって少し間違えれば、万引きでもしなければ生きていけないぎりぎりのところにいるのだ。そんな自分が、仕事とはいえ、生活に困って万引きや不正を行った人を取り締まる側にいることが辛くて仕方がなかった。そして彼は……。

クリックするとラストが表示されます(ネタバレ注意!)
ついに仕事の途中に職場を飛び出すと、そのまま家路
につくのだった。

感想

 どの国でも中高年にとって厳しい時代なのだと思いました。似たようなモチーフの作品としては「私はダニエル・ブレイク」がありますが、本作の主人公トグルドーの社会との向き合い方はもう少し控えめです。

 あらすじは短くまとめましたが、リストラされた中高年の生活の虚しさがリアルに描かれた結果であり、決して中身がないというわけではありません。「頑張って働いて真面目に生きてきたのに、なぜこのような罰を受けなければならないのか」そんな無念さが伝わってきます。彼の姿を見た若い世代の方々は「新しいことを学ぶ努力をしなかったからでは」、「プライドばかり高いからダメなんだ」などと批判するかもしれません。しかし自分が歳をとったとき気付く日が来ると思います。努力やプライドとは関係なく、「老いた」だけで無価値だと扱われるようになってしまうことを。

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