2016年 アメリカ
米軍スナイパーのマイクは、トミーとともに北アフリカでテロ組織のボスの狙撃を命じられていた。しかし崖上で待ち構える2人の目の前で始まったのは結婚式だった。司令部からは構わず作戦を遂行するよう命じられたが、マイクは引き金を引くことを躊躇った。そうしているうちに敵に発見されてしまった。必死の逃走でなんとか敵をやりすごしたものの、指定された救出ポイントまで砂漠を歩き続ける羽目になった。
道中、トミーは母国にいる息子に会いたいと身の上話をするが、マイクは黙ったまま語ろうとしなかった。マイクの脳裏にあったのは、恋人ジェニーとギクシャクした関係のまま別れてしまった日のことだった。
突然、目の前を歩いていたトミーが爆発音と共に吹っ飛ばされた。2人はいつの間にか地雷原に入り込んでしまっていたのだ。両足を失い苦しむトミーを助けようと近寄ったその時、マイクの足裏に地雷を踏んだ感触があった。身動きが取れなくなったマイクの目の前で、絶望したトミーは銃で自殺した。彼が持っていた無線を苦労して手元に引き寄せ司令部に救援を求めたが、返答は52時間後に付近を通過する部隊が回収に向かうまで自力で耐えろという無情なものだった。
砂漠の中で水も食料もなく、足を動かすこともできないため体勢を変えることもできないまま、マイクはひたすら耐え続けた。そこへ地元民のベルベル人の男が通りかかった。マイクはその男に「なぜそこで立ち止まっているのか、前に進むべきだ」と諭された。もし動いたら地雷が不発弾でない限り死ぬからだとマイクが答えると、その男は「不発弾で生存できる可能性があるのだったら、それにかけるべきだ」と言い返してきた。マイクにはその男の考えが到底理解できなかった。
しかし、昼は灼熱地獄の乾きに苛まれ、夜は狼に襲われる恐怖にさらされるうちに、マイクの胸中にようやく開き直りの感情が芽生えてきた。そして、自分の人生はいつも新たな一歩を踏み出すことを躊躇い、逃げ回ってばかりだったこと、ジェニーとの関係もそれが原因でダメになったのだと気づいた。
永遠に感じられた時が終わり、地平線に味方の車列が上げる砂塵が見えた。このままでは自分に気づかず通り過ぎてしまうが、自分の居場所を知らせるための発煙筒は足を動かさなければ届かないところに落ちていた。足を動かせば地雷が爆発して死ぬかもしれない、しかし足を動かさなければ救出されるチャンスを失ってしまう。マイクの決断は……。
砂漠の中で地雷を踏んで、救出されるまで延々一人で耐えるという設定で100分の尺が埋まるのかと思ってみましたが、さすがきちんと持たせています。おおよそだが、地雷を踏むまでが20分、ラストまでが80分といった按配になっていました。おそらく低予算だが安っぽさを見せないところもなかなかの力量です。
長く続く極限状態の中で、ベルベル人の男との禅問答のようなやり取りが触媒となり、殻に閉じこもっていた自我を解放させていくというプロットになっています。ここまで極限状態にならないと治らないとはかなりの重症ですが、実は多くの人にとって自分自身との対話は、転機となるような大きな出来事がないとなかなかできないものです。自己防衛本能からか、人は誰しも自己を深く探求することを避けようとする傾向があるからです。
実はマイクの優柔不断が遠因となってトミーは死んでしまったのですが、当の本人は自責の念にかられた様子がありません。その辺りの詰めの甘さが少し残念な作品でしたが、主演のアーミー・ハマーのイケメンぶりで十分成立しているので楽しめると思います。
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