俺は気が済むまで事件を手放さない。それが刑事だ。 [特捜部Q 〜檻の中の女〜]

2013年 デンマーク

コンテンツ

あらすじ

(プロットを一部アレンジ)

~ミレーデが目を覚ますと、そこは真っ暗なタンクだった。スピーカーから男の声で「2barに加圧する、1年後にまた会おう」と一方的に宣告される。地獄の日々が始まった。彼女はなぜそのような仕打ちをうけなければならないのか見当もつかないまま、生き延びるためにただ暗闇と孤独に耐えるしかなかった。~

 ……コペンハーゲン警察の殺人課の刑事カールは相棒の言葉に耳を貸さず応援を待たず犯人の家に突入し、待ち伏せしていた犯人に銃で撃たれてしまった。

 3ヶ月後に復職したカールは、迷宮入りした事件を検証する特捜部Qへ異動を命じられた。書類庫でカビ臭い書類を繰るだけの閑職だった。同僚は同時期に異動してきたアラブ系のアサドという名の男だけだった。腐るカールの前にアサドがファイルを持ってきた。それはフェリーから飛び降り自殺したミレーデという女性議員の事件の記録だった。それを見たカールは、担当刑事がミレーデの失踪をフェリーから海上に身を投げたという安易な推測で片付けていたことが気に入らなかった。妥協できないカールは上司に無断でアサドを誘って再捜査を始めた。

 ミレーデは、幼い時に交通事故で両親を亡くし、家族はウフェという解離性障害を抱える弟だけだった。証言によると失踪時にミレーデと一緒にフェリーに乗船していたらしい。話を聞こうとするが、誰にも心を開かないウフェが口を開くことはなかった。カールは早々に見切りをつけたがアサドはその後も足繁くウフェに会いに施設に通った。

 やがてミレーデが事件の1ヶ月前にスウェーデンで開催された会議で知り合った男性と一夜をともにしたという情報を掴んだ。その頃アサドの努力が結実し、ウフェは彼に心を開き始めていた。アサドが会議の出席者が映った写真をウフェに見せると、1人の男に激しく反応した。

 出席者リストによると、ウフェが反応したのはバイオ・ダイナミクス社のダニエルという男だった。カール達はダニエルに会いに行くが、彼はミレーデの失踪後、溺死していた。”ダニエル”を名乗っていた写真の男はダニエルと同じ孤児院で育ったラーセという名の男だった。ラーセは幼い時の交通事故で父親と妹を失い、母親は障害者になっていた。

 カール達はラーセの情報を得るため彼の母親の家を訪れた。そこには期せずしてラーセ本人もいた。事情を尋ねるために任意同行を求めるが、ラーセは突然アサドを刺すと逃亡した。後を追ったカールは納屋の隠し部屋にミレーデが監禁されている巨大な圧力タンクを発見した。カールはミレーデを救出しようとするが、背後からラーセに襲われた。ピンチに陥ったカールを救ったのは、負傷しながらも駆けつけたアサドだった。

 事件解決後、カールは殺人課に戻してやると言われるが、特捜部Qに残って自分で選んだ事件を手がけたいと希望するのだった。

クリックするとラーセがミレーデを監禁した理由が表示されます(ネタバレ注意!)
ミレーデとラーセは家族を失った交通事故の当事者だった。事故の原因はミレーデが車を運転する父親にいたずらしたことで、父親がハンドル操作を誤ったことが原因だった。事故の直前、対向車に乗っていたラーセはその様子を目撃していて、自分の不遇は彼女のせいだと恨んでいたのだ。

感想

 迷宮入り事件を担当する部署をモチーフとする作品はいくつかあり、目新しいものではありません(一大ブームとなったXファイルもそうでしたね。ぶっ飛んだ方向性でしたが)。作風としては映画と長編テレビドラマの境界線上にありますが、これも刑事物によくあるパターンです。それだけテレビドラマが映画的になったと言えるのかも知れません。

 本作では、ミレーデの監禁シーンとカール達の捜査シーンが交互に描かれるのですが、時系列が判然としないため、ストーリーを追うのにやや疲れるいうのが正直な感想です。ストーリーも奇をてらったものではなく、刑事たちが細い糸な手がかりを追う道程を観客が追体験するという構成となっており、この辺は主人公のカールの職人気質な個性とよくマッチしています。
 ラーセがなぜこのような猟奇的な事件を企てたのか、その理由はラストシーンで明らかにされます。その瞬間、加害者と被害者の立場が大逆転する展開には感心させられました。

 ところでデンマークという国は地味な印象でしたが、本作の舞台となっていることもあって少し調べたところ、実際には2014年の国連世界幸福度報告では幸福度第1位、欧州においてもっともデジタル化された国とのことです。世界には我が国よりも先進的な社会があることを知るべきだと反省した次第です。
 長編ミステリー小説やハードボイルド系の刑事ものの王道パターンが好きな方に特におすすめです。

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Basco