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80年代サブカル映画の完成形 [ストレンジャー・ザン・パラダイス]

  ジム・ジャームッシュの出世作であり、映画史に残る名作です。
 その理由は、ストーリーではなく、そのスタイルです。
 全編モノクロ(それも粒子が荒い)映像で綴られていますが、この作品が作られた1984年は、当然カラー映像が主流であり、モノクロ映像はむしろ古臭くて敬遠されていた時代です。そういった時代において、敢えてモノクロ、そして敢えてノスタルジックな字幕や音楽を使っているあたりが、当時は斬新かつスタイリッシュだと評価されたのです。あれからさらに30年近いときが過ぎたデジタル全盛時代の今、銀塩写真やモノクロ写真への懐古趣味が若い世代を中心に復活してきています。この作品が再評価される日も遠くないかも知れません。
 そして登場人物のデカダンス(退廃的)なライフスタイルも魅力的です。誰ひとりとして、健康で長生きしようなんて真っ直ぐで計画的な生き方をしていません。ニコチンとタールの匂いがあちこちにこびりついていた時代、そんな80年代を思い出させてくれます。