2012年 ドイツ
夫に先立たれたオマは独りカナダの大自然でつましく暮らしていた。彼女の故郷はドイツだったが、今の暮らしに不満はなかった。しかし娘のマリーは年老いた母が独り過酷な大自然の中で暮らしているのが心配でならなかった。気は進まなかったがマリーに言われるがまま、ドイツにある娘の家に移り住むことになった。
オマにはローマ法王から祝福してもらうという長年の夢があった。彼女の心の中にはずっと突き刺さっている「神にしか赦してもらえない罪」があり、それから解放されるためには祝福してもらうしかないと思っていたのだ。そしてその夢が娘の家族とのローマ旅行でついに叶うと胸を躍らせていたが、残念ながら旅行は中止になってしまった。諦めきれないオマは果敢にも単身でローマへ行き、そこに暮らすマリーの娘マルティナの家を訪ねた。マリーからはマルティナが敬虔なカトリック教徒として日々を過ごしていると聞いていたが、実際には怪しい裏通りでロックミュージシャンと同棲していた。
オマは法王の集合謁見のためにバチカンへ行った。長い行列に並んでもうすぐ自分の番というときに、盲目の老年の男性ロレンツィオが現れた。オマはカトリック信者として恥じぬよう自分の順番をロレンツィオに譲った。その結果、時間切れで謁見は終わってしまった。がっかりして帰る途中、オマは盲目だったはずのロレンツィオがスクーターで走り去るのを見かけた。ペテンだったのだ。
腹立たしく思いながら、食事を摂ろうとバイエルン料理の店「リセロッタ」に入ったが、今度はやる気のない店主ティノが出してきた料理に憤慨し、勝手に厨房に乗り込んで自分で調理して、勝手に食べて店を後にした。入れ替わるように店にロレンツィオがやってきた。彼はティノの親戚だったのだ。オマが作った料理をつまみ食いしたロレンツィオは彼女の料理の腕前に感心させられた。
オマが再び集合謁見の会場に行くと、またロレンツィオが現れた。ペテンにかけられたことを思い出し怒りが抑えられなかったオマは護身用にと持たせられていたペッパースプレーをロレンツィオに向かって噴射した。しかし狙いが外れ、こともあろうにちょうど通りかかった法皇に浴びせてしまった。
その場でオマは逮捕され警察に連行された。オマの起こした騒ぎはたちまちニュースになって知れ渡った。どうしてよいかわからず途方に暮れるオマのところへロレンツィオがやってきた。そして警官に向かって、自分はオマの婚約者で、浮気に腹を立てたオマが自分に向かってスプレーを浴びせようとしたのだなどとデタラメをいってオマを窮地から救った。
警察署から出ると、ロレンツィオはオマに法王の祝福を受けるために見せかけの結婚をしようと持ちかけた。オマはなんとしても法王の祝福を受けたかったので、彼の提案に乗ることにし、その見返りにティノがやっている「リコリッタ」を手伝うことにした。
マルゲレーテの作る本格的な料理は、たちまち評判になり店は繁盛した。マルゲレーテはローマでの充実した日々を存分に楽しんだ。
そして、いよいよ法王謁見の日が訪れた。郵便局で働いていたときのものだという制服に身を包んだロレンツィオの隣でベールを被って法王を待つオマだったが、いよいよというときに突然心を乱し、会場から走り去ってしまった。そして追ってきたロレンツィオに、偽って法王の祝福を受けることはできない、自分には神にしか許してもらえない罪があると告白するのだった。どうなだめても、頑なな態度のオマに怒ったロレンツィオは彼女を置いて立ち去ってしまった。
その頃、オマの後を追ってマリーがローマにやってきた。彼女は娘のマルティナが品行方正な生活をしていることを信じて疑わなかった。しかし、すぐにそれが幻想だったことを知った。怒ったマリーは、明日にでもオマとマルティナを連れてドイツに帰ろうとした。そんな自分本位な態度をとるマリーに、オマが「私はローマでの毎日が楽しいの。いちいち干渉しないで!あなたはみんなを縛り付けている!」と叱った。マリーは母親であるオマの言葉に力が抜けた。彼女は彼女で一家を自分が支えなければならないという責任感に押しつぶされそうになっていたのだ。
その夜は、オマ、マリー、マルティナの親子3代で、久しぶりにくつろいだ時間を過ごし、お互い心を開いておしゃべりに花を咲かせているうちに、オマが法王の祝福を受けたがっている理由が話題になった。オマの口から語られた事実にマリーとマルティナにとって衝撃的なものだった。
3人はドイツに帰ることにした。その頃、ロレンツィオはオマの夢を叶えてやろうと単身バチカンへ向かい、自分のスクーターと引き換えに法王のデザートをオマが作ることができるよう手を回してもらっていた。そうすればオマが法王に直接会うチャンスがやってくると踏んだのだ。
オマが「リセロッタ」に別れを告げに行くと、オマに電話があった。ロレンツィオからだった。そして「これからすぐにバチカンで100人分のデザートを作ってほしい!」と言うのだ。訳もわからぬまま時間がないと焦るオマのところにマリーとマルティナが駆けつけ手伝った。そして無事デザートを作り終えてほっとする3人のもとへ法王が礼を言いに現れた。そして、ついにオマは念願の法王の祝福を受けることができたのだ。
念願がかなったオマは一大決心をした。このままローマに残ることにしたのだ。そしてバチカンを出るときにたまたま見かけたロレンツィオのスクーターの鍵を拝借すると、そのままスクーターに乗ってロレンツィオのところへ向かった。2人は和解した。ひょっとしたら、これから一緒の時間を歩むことにしたのかもしれない。
バグダッド・カフェで一躍有名になったマリアンネ・ゼーゲブレヒト主演の作品です。25年経って、それなりにお歳を召しましたが、チャーミングな仕草や表情は変わりません。実際にはこの方根っからのアーティストなんですよね。経歴も
幼少期から芝居に興味を示しており、学生時代には劇団の一員となるが、一方で写真や医療について学ぶ。
wikipedia
19歳で結婚し娘を儲けている。またこの頃、夫と妹と共に地元シュタンベルクのキャバレー“Spinnradl”で4年間勤務していた。
1976年に離婚後、77年に実験的要素が強い劇団オペラ・キュリオーザを旗揚げする。
と全力で生きている感じです。
今回の作品のプロモーションで来日したときのインタビューでも、シュワルツネッガーやウッディ・アレンからの出演オファーを断ったエピソードで、その理由を
役者仲間からは怒られましたが、ファンの方々はどうして引き受けないのかを理解してくださるので無理してやるつもりはありませんし、自分のやることには責任を持っていたいのです。犯罪映画や出演している方を批判するつもりはなく、私は出ないというだけで、それで40年間やってきました。
「映画と。」より
と語っていて、やはり自分の信念を貫きたいという意志の強さをうかがわせます。少しハリウッドというメジャーに対する複雑な感情も見てとれますが、私なんかはそんなところも共感します。ちなみにインタビューの全文は↓から。
そしてお相手のジャンカルロ・ジャンニーニ。役柄的には薄っぺらいペテン師ですが、人好きのするなんとも憎めないキャラクターに演じあげてて、ついうっかり「ロレンツィオ」みたいな男になりたいと思ってしまうかも。
ところで、オマは「神にしか許してもらえない罪」を犯したために、法王の祝福をどうしてもうけたがっていたのだけど、それはなんだったのでしょうか。作品を観た方が絶対に楽しめますが、どうしてもという方はクリックしてください。
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マリアンネ・ゼーゲブレヒトの主演作品です