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庶民が庶民の命を奪うテロの虚しさ [ホテル・ムンバイ]

2018年 オーストラリア・インド・アメリカ

コンテンツ

あらすじ

 2008年11月26日、ムンバイの浜辺に10人の若い男達がゴムボートで辿り着いた。彼らはイスラーム過激派のテロリストに仕立て上げられていた。上陸すると、ボスの命令に従いタクシーに分乗するとそれぞれの目的地へと向かった。

 高級ホテルのホテル・ムンバイの従業員として働くアルジュンにとって、その日はいつもと変わらぬ1日だった。まさか、人生最悪の日になろうとはつゆほども知らなかった。アルジュンが上客をレストランでもてなしているとき、街ではボートでやってきたテロリストによって駅を皮切りに無差別殺戮が始まっていた。彼らの最終ターゲットはホテル・ムンバイだった。

 ロビーで殺戮が始まった。レストランにいたアルジュンは機転をきかせ、照明を落とすと客達を床に伏せさせた。レストランを通り過ぎたテロリスト達はスイートルームのある上層階に向かうと、部屋から誘き出した宿泊客を次々と銃殺していった。

 アルジュンは料理長の指示で会員制のラウンジに客達を誘導した。そこは会員制であるが故にホテル内でも分かりにくい場所にあり、格好の隠れ場所だった。しかし待てど暮らせど救出にやってくる気配がなかった。実はムンバイには特殊部隊が配置されておらず、はるか遠方からやってくる部隊が到着するまで地元警察は待機するよう命じられていたのだ。

 不安に駆られた客の1人がマスコミに電話をかけ、自分たちの居場所をリークしてしまった。そのせいで皆の隠れている場所がテロリスト達にも知れてしまった。もはやそこは安全ではなかった。追い詰められたアルジュン達は客達を誘導してラウンジ裏口の非常階段から脱出することにした。そうしている間にもラウンジのドアがテロリスト達に破られようとしていた。果たして皆無事に脱出できるのだろうか。

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非常階段に出た直後犯人達が突入してくる。何人かは殺されてしまった。ようやく特殊部隊が突入してきて、犠牲者を出しながらも多くの客が脱出することができた。アルジュンも無事生還し家族との再会を果たした。
実行犯10人のうち9人は殺害された。パキスタンにいた首謀者は捕まっていない。
ホテルの犠牲者の半分は客を守るために残った従業員達だった。

感想

 実話ベースの作品です。ポスターなどのアートワークから、アルジュンが主役のような印象を受けますが、実際にはこの事件に巻き込まれた人々の群像劇となっていて、大逆転の秘策が繰り出されるわけでもなく、現実さながらにただひたすら混乱と恐怖に耐える姿が描かれる非情なドラマとなっています。テイストとしては、ディスカバリーチャンネルなどのドキュメンタリー再現ドラマに近い感じです。

 テロリストに仕立て上げられた若者達は、最終的にはほぼ全員殺害されますが、彼らに電話を通じて指示していた首謀者は今もなお不明とのことです。自分の思想信条の実現のためであれば、自らの手を汚すべきというつもりはありませんが、他の人間を駒扱いして自分は高みの見物という根性はいただけません。ましてや若者の正義感を弄ぶようなことは、断じて許し難いことで腹立たしい限りです。

 ちなみにホテル・ムンバイはこの事件の後、修復され、程なくして営業を再開したとのことで、その祝典シーンでこの作品は終わります。テロリストに屈しないというメッセージなのでしょうが、お互いが一方的な被害者面をしているうちは、テロという問題に終わりはないと思います。そして、その中で日々命を脅かされるのはいつも市井の庶民というのは悲しい現実です。

 もう少しテロリスト側の事情も深掘りするという方向性もあったと思いますが、わかり易さを重視したのか片面的な内容にとどまっているように感じられました。にもかかわらず、薄味の脚色でさほどドラマティックでもないので、なんとなく中途半端で印象に残らない作品となっている点が少し残念でした。 

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Basco